今回のFOMCは株式市場にネガティブなものではない
米連邦準備制度理事会(FRB)は1月31日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を4会合連続で据え置いた。現状維持は予想通りでサプライズはなかった。一方、声明文には「2%の物価目標達成に向け、より確かな自信を得るまで利下げは適切ではない」との表現が追加された。FRBのパウエル議長は「物価が持続的に2%に向かうと自信を持てる証拠がもっと必要」「3月会合までに確信できるレベルに達する可能性は低い」と記者会見で述べた。つまり3月利下げを明確に否定した格好だ。これにより市場の一部にあった3月利下げ期待が打ち砕かれ、31日の米国株式市場は総崩れとなった。ここまでの流れを見れば、今回のFOMCは株式市場にネガティブだったように思えるが、そうではない。
まず、単純に市場が期待する利下げ時期が後ろにずれただけである。あくまでFedWatchの見通しだが、5月会合での利下げ確率は7割以上、6月会合で現状維持を見込むのは0、つまり6月には100%利下げがなされているとの市場の織り込みだ。
実際、今回のFOMCは利下げへのステップを一歩進めた感があった。前回までは、まだ利上げの可能性も残されているとの含みを持たせていたが、今回はそれを一掃。もう利上げはないと利上げ打ち止めを明確にした。それでも利下げはまだだよ、というメッセージなのだが、一方で利下げに道を開く好材料もあった。
米国経済の進む方向は利下げ路線が一層、明確に
米国の利下げの道を阻むのは、米国景気が強過ぎることだ。(米国景気の強さについては、大槻さんのコラム『「米経済見通し大幅修正」で押さえておくべきポイント』をご参照)ところがFOMC後の会見でパウエル議長は「高い成長率は問題視していない」と述べた。これまでは、インフレ沈静化のためには景気が減速する必要があるとしていたが、その見方を修正した。これは米国経済が進む方向を追認したことになる。米国経済はソフトランディングに向かっている。景気が強いまま、インフレが落ち着く。それでも「利下げはできますよ」と言っているわけだ。まとめると、今回のFOMCでは利下げ路線が一層、明確になった。だからこそ米国金利は低下し、為替も円高に振れたのである。
そして米国株式市場は、FOMCを利益確定売りの材料にしただけで、早くも6月利下げを織り込むかのように、1日で1月31日の下げを取り戻した。ダウ平均は再び史上最高値更新である。
ますます締まってくる日本株
さて日本株である。昨日2月1日の日経平均は4営業日ぶりに反落し、前日比275円安の3万6011円で終えた。しかし、節目の3万6000円を終値で維持した。取引時間中の値動きを見ても3万6000円どころを相当意識したような展開だった。これで3万6000円が固いとの認識が広まれば、ここを売ってくる圧力は一層後退するだろう。
昨日2月1日発表された投資部門別売買動向によると、1月第4週(1月22日~1月26日)に海外投資家は現物株を4105億円買い越した。買い越しは年初から4週連続で、累計で1兆8909億円となった。海外投資家による日本株買いはまだ続いている。
何といってもファンダメンタルズが良好だ。日経新聞は昨日2月1日付けの朝刊1面で、上場企業の6割が増益だと報じた。東証プライム企業約270社を集計したところ純利益が増えた企業の比率は61%と、新型コロナウイルス禍の反動で急回復した2021年4~12月期(73%)以来の高水準となるとのこと。1月31日時点の純利益合計は前年同期比70%増だったという。
好調な企業業績と海外投資家の継続的な買い越しに支えられて、ますます日本株相場は締まってくる。押し目買いは言うまでもないが、押さずとも買いに動いたほうが得策に思う。