「トランプ関税」不安の行方と、迫る4月相場

2025/03/28

今週の株式市場ですが、日本株は、26日(水)の取引終了時点で日経平均が38,000円台、TOPIXが2,800p台の節目の株価水準をそれぞれ回復させたほか、米国株市場でも主要株価指数が続伸基調を辿り、25日(火)時点で、NYダウが42,000ドル台、ナスダック総合指数も18,000p台を回復させる動きを見せるなど、日米ともに株価の戻りをうかがう展開となっていました。こうした株価反発の背景として、いよいよ来週の4月2日にトランプ政権が公表する予定だった「相互関税」に対する過度な警戒感が後退したことが挙げられます。

具体的には、「関税の対象国が絞り込まれる(ブルームバーグ)」とか、「相互関税の公表が4月2日よりも後ずれする可能性(ウォール・ストリート・ジャーナル)」といった観測報道が相次いだほか、トランプ大統領からも「(関税に対して)多少の融通の余地があるかもしれない」などの発言があり、株価反発のきっかけとなりました。

確かに、来週に公表される相互関税が、市場が警戒していたほどの内容にならない可能性は高まったと言えます。

ところが、米国の現地時間26日(水)に、トランプ政権から自動車関税を実施することが公表され、それを受けた米国株が下落、27日(木)の日本株市場も再び38,000円台割れでスタートするなど、依然として先行きは不透明です。そのため、相場が織り込める将来の時間軸が短いままであるほか、少なくとも、近いうちに相互関税が賦課される国や地域が指定されること自体も変わりはなく、となると、どの国や地域が相互関税の対象となるのか、また、どんな理由で、どのような関税が実施されるのかの思惑を引きずって来週を迎えることになり、足元の株価の動きや市場のムードが示すほど、状況は改善していないと思われます。

さらに、米トランプ政権は相手国の関税率だけでなく、他の税制や規制、為替政策などの「非関税障壁」も考慮する方針を示しており、例えば、EUの付加価値税や、日本の輸出企業が消費税を免除されている制度などが、米国との貿易にとって不公平であると指摘していることを踏まえると、日本も相互関税の対象国になる可能性があります。

このように、目まぐるしく状況が変わる米トランプ政権の関税政策に相場が振り回されている格好となっていますが、気が付けば、来週からは新年度の4月相場入りとなります。株式市場のアノマリーとしては、4月は海外投資家が買い越すことが多いとされ、事実、過去20年間のうち、4月に海外投資家が売り越したのは、コロナショックに揺れた2020年だけとなっており、需給面だけでみれば上昇への期待感が高まりそうです。

とはいえ、4月のあたまは米トランプ政権の関税以外にも、日銀短観が公表されるほか、月の半ば以降からは日米で決算発表シーズンを迎えるなど、結構忙しいスケジュール感となっています。特に、米国では景況感の悪化を示す経済指標が増えていることもあり、市場の一部では、「景気が本格的に減速した際、米トランプ政権の政策の影響でインフレや金利が高止まりし、適切に利下げできない」という、いわゆる「スタグフレーション」を懸念する見方もあるため、4月はこうした懸念が現実となりそうなのかを見極めることになります。

逆を言えば、懸念のままで終わるのであれば、株式市場は大きく上昇していくと考えられるため、ムードに流されることなく、冷静に状況を見極めつつ相場に臨みたいところです。

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