日経平均のフェアバリュー

2025/03/21
  • 昨年からの日経平均の動きは日経平均自体のファンダメンタルズに即している
  • 日経平均は3万8000円が妥当な値

最後にストラテジーレポートでマーケットのことを書いたのは2月末。それから3週間というもの、レポートを更新しなかった。書くべきことは書いてしまったからである。そこで述べたのは以下のようなことであった。

  • 割高な米国株の調整が始まった。しばらく不安定な相場が続く。
  • 国内にも株価の上値を抑える要因があり、その筆頭は日銀のスタンス。
  • それに加えて政治の低レベルさが酷い。政治家の馬鹿さ加減に拍車がかかっている。

レポートを書かなかった3週間、相場は上述した通りの展開となった。NYダウ平均の2月末の終値は4万3840ドル。そこから2週間足らずの3月13日まで3000ドル下げた。S&P500は直近高値の2月19日比で10%下落し、調整相場入り。トランプ米大統領による関税政策の不透明感から景気懸念が拡大し、株式市場の動揺を誘った格好だが、根本的な理由はシンプルで、われわれが指摘した通り、割高さに対する調整である。

国内の政治の愚鈍ぶりが酷過ぎて目も当てられない。レポートで「政治家の馬鹿さ加減に拍車がかかっている」と書いたが、その直後に石破首相の商品券問題が発覚した。ざっくり言えば、石破政権というのは「政治とカネの問題」で岸田さんが退陣したから生まれたようなもので、先の衆院選では「政治とカネの問題」に対する国民の不満が収まっていないため自民党が惨敗、少数与党として国会運営に苦慮している最中だ。こういう状況下にあって新人議員に商品券を配るとは、どういうつもりなのか。気は確かか?その釈明の醜いことと言ったら、聞かされるこちらが恥ずかしくなるような戯言である。

これで夏の参院選の政治リスクが一段と高くなったと言えるだろう。参院選前に石破さんじゃ戦えないというムードが高まるのは必至だ。また日本という国は、首相が1年も経たずにコロコロ変わる - それでいて本質的なものは、なかなか変わらない国に逆戻りというイメージを世界に与えるだろう。

昨年からの日経平均の動きは日経平均自体のファンダメンタルズに即している

こんな状況で日本株はよく持ちこたえていると言える、と書いたが、案の定、こらえきれずに下押しした。日経平均は瞬間的に3万6000円割れまで売られたが、その後切り返しに転じた。前回のレポートを書いた2月末の終値は3万7155円。その後、取引時間中に3万8000円を回復するなど大きく持ち直した。結局、この間の下振れは月足で見れば下ヒゲに終わるだろう。トレーディング・チャンスであったかもしれないが、言うなれば相場の綾であり、そこまで追いかけなくてもいいだろう。

この間の日経平均の動きは、米国株の調整の巻き添えを食った感もあるが、実は日経平均自体のファンダメンタルズに即したものである。

日経平均は3万8000円が妥当な値

グラフは企業業績と金利だけで日経平均をどこまで説明できるかを見たものである。オレンジ色の理論株価は予想EPS(1株当たり純利益)を割引率で割ったもので、割引率は10年債利回りにリスクプレミアムとして5%を加えたものである。

出所:QUICK社データよりマネックス証券作成

これを見るとちょうど1年前、日経平均が4万円をつけたときは、かなり理論値どおりの動きだったことがわかる。つけるべくして、つけた4万円であったのだ。その後、金利上昇を反映して理論株価は低下するが、実際の株価も3万8000円程度に下げた。これも理論値に沿った動きであった。7月に4万2000円の高値をつけたのは理論値からは行き過ぎだった。それもあって、その後「令和のブラックマンデー」につながった。大暴落以降は、投資家心理が委縮したため、理論値では4万2000円もあり得たのだが、株価は3万8000円~4万円のボックス圏を往来した。そして足元の株価下落は理論株価が金利上昇を反映して下がってきていることに整合的な動きである。

現在の長期金利1.5%超の水準と予想EPSからは日経平均は3万8000円が妥当な値である。その意味では、現在の株価はまさにフェアバリューにあると言える。

マネックス証券株式会社
広木隆「ストラテジーレポート」   マネックス証券株式会社
マネックス証券 チーフ・ストラテジストの広木隆が、個別銘柄まで踏込んだ実践的な株式投資戦略をご提供します。マーケットについてTwitterでもつぶやいています(@TakashiHiroki
・当社は、本レポートの内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、
 また保証するものではございません。
・記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、
 勧誘するものではございません。
・過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
・提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。
・当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。
・投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
・本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに
 転用・複製・配布することはできません。

マネックス証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第165号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会

このページのトップへ