コロナウイルスに勝つには?:ドイツの合理性と人間愛に学ぶ
欧州の優等生
新型コロナウイルスとの戦いにおいて、世界から称賛を得るべき国々があります。アジアでは韓国や台湾ですが、欧米諸国に限ればどうでしょうか。筆頭に来るのは、合理性と人間愛の国、ドイツです。
ドイツの優秀さは、このウイルスによる致死率(死亡者数÷感染者数)の低さが示しています(図表1)。それが低いのは、第一に、陽性かどうかを調べる検査を大量に行っているためです(→確認済み感染者数が多くなる)。第二に、優れた医療体制で多くの生命を救っているからです(→死亡者数が抑えられる)。
大量検査は当然
大量のPCR検査(ウイルスの遺伝子を増殖して検出する手法)などを実施しているのは、合理性を重んじるドイツとしては全く当然です。感染データが不十分では、現状分析も適切な対策も行えません。
ドイツでは、軽症や無症状の人もコロナウイルスの検査対象です。そのためもあって、ドイツにおける確認済み感染者数は現在約16万人と、日本の10倍超です。それでも、医療の崩壊・機能麻痺などは起こっていません。その一因は、人命第一の哲学に立ち、十分な財政資金を医療に投じてきたことです。
倹約のおかげで
ただし、ドイツの財政運営は効率的で、昨年も財政黒字を維持しました。もっと公共投資などを行い国内やユーロ圏の経済を支えるべき、との他国からの批判にもひるまず、財政規律を守ってきたのです。
しかしドイツ人は、杓子定規のルール至上主義者ではありません。コロナショックに襲われる中、大規模な経済対策を素早く決めたのです(零細企業などの支援)。そのため、今年は財政赤字に転じるのが確実です。ただ、累積債務を気にせずに一時的な赤字を許容できるのは、これまでの倹約のおかげです。
景気は厳しい
とはいえドイツ景気は、深い落ち込みが必至です(図表2)。ウイルス感染を抑止すべく、ロックダウン(移動・外出・出勤などの制限)を導入したからです。目先の経済より、人命救済を優先したのです。
ロックダウンの一部は、4月下旬に緩和されました(小規模店舗の再開など)。ただ、ウイルス感染は終息していないため、全面解除には極めて慎重です。さらに、輸出や製造業の比率が高いドイツにとって、コロナショックによる世界不況は、大きな障害です。ドイツ景気の急回復は、当面期待薄でしょう。
リーダーの力
しかしドイツは、この上なき幸運に恵まれました。それは、物理学を修めた女性が今、ドイツを率いていることです。すなわちこの危機に際し、メルケル首相以上に頼れるリーダーは、ほとんどいません。
コロナウイルスに打ち勝つには、冷静な科学的精神と、温かい慈愛・共感力が必要です。それら両方を兼ね備えているのが、メルケル首相にほかなりません。コロナショックのような危機は、各国におけるリーダーの本当の力を浮き彫りにします。この点でもドイツは、世界の中で燦然と輝いているのです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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