ECBは包括的な追加緩和策を決定

2016/03/11

1.予想を上回る追加緩和策、利下げは打ち止め

欧州中央銀行(ECB)は3月10日、主要3金利の引き下げに加え、資産買入れ額の拡大、長期資金供給オペの実施を決めました(図表1)。

昨年12月の追加緩和では、下限金利の中銀預金金利の引き下げだけでしたが、今回は主要政策金利(リファイナンス金利)、上限金利の限界貸出金利についても引き下げました(図表2)。資産買入れ額については、月間600億ユーロから800億ユーロに拡大し、市場予想の700億ユーロを大きく上回りました。また、買入対象に社債を加えるとともに、新たに6月から期間4年の貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTROⅡ)を実施することも決めました。

市場は、事前の予想を大きく上回る追加緩和策だったことから、欧米市場では株高、ユーロ安、債券高(利回り低下)で反応しましたが、その後ドラギECB総裁が「現状およびECBの政策を考慮すると、さらに利下げが必要になるとは予想していない」と発言したことを受け、株安、ユーロ高、債券安に転じてしまいました。

これまでも、マイナス金利での1回の引き下げ幅は10bp(0.1%)刻みにとどめてきており、マイナス金利の引き下げにはやや慎重姿勢がみられていましたが、今回のドラギ総裁の発言で、追加利下げへの期待は大きく後退することになりそうです。短期金融市場が織り込む将来の短期金利の水準も、下向きからほぼ横ばいに変わっています(図表3)。今後は、金利よりも、資産購入や長期の資金供給に金融政策の軸足が移ることになりそうです。

2.しばらくは、追加緩和の浸透見極め

同日公表された経済見通しでは、2016年のユーロ圏の物価上昇率予想を、原油安を背景に2015年12月時点の1.0%から0.1%に大幅に下方修正しました。2017年は1.3%で、ECBの物価目標である2%弱に当面届かない見通し。 また、2016年の経済成長率見通しについても新興国の景気減速などを考慮し、1.7%から1.4%に引き下げました。2014年6月からマイナス金利導入、2015年3月からは国債買入れを開始しましたが、景気低迷や低インフレが解消されていない状況です(図表4)。

ドラギ総裁の発言は、ネガティブサプライズとなってしまいましたが、マイナス金利政策、量的緩和政策は続きます。マイナス金利拡大に歯止めをかけ銀行収益に配慮するとともに、銀行にマイナス金利で資金供給し融資を促す仕組みも作りました。しばらくは、ECBの金融政策の浸透を確認していくことになります。

20160311

 

 

印刷用PDFはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「投資環境」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
内外の投資環境分析を基に、投資に資する情報、見通しなどを、タイムリーにお伝えします。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ