米国利下げ遅延、FRBはリステイクを抑制へ
【ストラテジーブレティン(352号)】
“Good news is bad news bad news is good news” は今の米国経済情勢を端的に物語る。減速しない好調さにより、利下げ期待が遠のき株安要因になっている。
何故減速しないのか。経済のアクセルとなっている3要因がある。第一は新産業革命による企業の旺盛な価値創造、第二は財政拡大、第三は株高による資産効果である。このうち新産業革命と財政拡大は当面大きく変わりにくい、となると求められるブレーキ役は株価の抑制による総需要の冷却以外にない、と言うことになる。FRBは利下げ遅延を余儀なくされるとみられるが、狙いはリスクテイク意欲の抑制による資産価格の調整にある、と考えるべきかもしれない。年初急騰した米国株式はしばし調整場面を迎えそうである。
(1) 景況感に陰りなし
米国経済は完全雇用のもとインフレも沈静化しつつあり、ソフトランディンクの可能性が高まっている。雇用好調だが今のところ賃金上昇は加速していない。3月の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比30.3万人増と、市場予想(20万人増)を大きく上回った。雇用は全産業で増加している。平均時給は前年比4.1%増と、2月の4.3%から低下した。移民の増加や労働参加率の改善などの供給増も寄与している。
しかし今までのベストシナリオであった経済の底堅さは、今後のリスクシナリオに転換するかもしれない。この成長ペースが続けばいずれ物価が加速する可能性が高い。またバラ色シナリオがバブルの種を作る。2023年GDP2.5%に続き2024年1Qはアトランタ連銀によるGDPナウでは2.5%と好調である。地区連銀総裁は相次いで、インフレ高止まりや好労働需給に言及し、利下げを急ぐべきではないと強調しはじめた。
実際、3月のCPIは、前年比3.5%上昇と2月の3.2%から加速、市場予想3.4%を上回った。ガソリンと住居費の上昇が主因だが、賃金の下げ止まりによりFRBが気にしているコアサービス価格の上昇率が高まっており、利下げ遅延観測を強めている。市場ではFFRBが9月まで利下げを見送るという観測が強まった。