決算発表で、過度に楽観視されていた企業業績見通しの適正化(バリュエーション調整)が図られる

2024/04/23

 

13日に、イランは無人機やミサイルによるイスラエルへの攻撃を行いました。これに対するイスラエルの反撃が予断を許さない状況で、19日にイラン国内で爆発音があったとの報道から同日の日経平均株価は一時1300円超の下落となりました。しかしながら、13日のイランの攻撃は事前通告されていたものであり、19日のイスラエルとみられる反撃もかなり限定的なものにとどまっており、あくまでも両国の国内強硬派を抑止するための行動との見方が広がっています。21日にイランの最高指導者ハメネイ師は「標的に命中した数は重要ではない、重要なのはイランが力を示したことだ」と攻撃の終結を匂わせる発言を行ったことも注目されました。一時85ドル台に上昇した原油価格(NY)は、足元では82ドル台で推移しており、戦火が拡大するとは見ていないようです。

先週、最も市場を揺るがしたのは、オランダASML(17日)と台湾TSM(18日)の決算でした。ASMLの1-3月決算は市場予想を下回り、4-6月期見通しも市場予想を下回りました。TSMCの1-3月期は売上・利益ともに過去最高の好決算でしたが、2024年の半導体市場全体の見通しを引き下げました。これにより半導体関連銘柄が急落しました。日本企業も週間の株価で、レーザーテック(6920)▲20.7%、ソシオネクスト(6526)▲17.8%、東京エレクトロン(8035)▲15.1%と大幅な下落でした。

今週は、26日に3月の米個人支出(PCE)物価指数が公表される。15日に発表された3月の米小売売上高が前月比+0.7%と市場予想(+0.3%)を大きく上回り、FRBの利下げ期待が後退している。米長期金利(10年債)は4.6%台に高止まりしており、そのため円安圧力を高めています。25-26日の日銀金融政策決定会合では政策変更は見込まれてはおりませんが、警戒感から買戻しに動きづらい相場が予想されます。会合後の総裁会見では円安対策に関する質問が集中するものと思われます。

17日に発表された貿易統計(3月)は、輸出が金額ベースで前年同月比+7.3%でしたが、数量指数では▲2.1%と2カ月連続のマイナスとなりました。前年同月と比べて10.7%円安であったことを鑑みれば実体的には楽観できる輸出状況にはないことが伺えます。現在の株価下落は米国株式市場の影響や地政学リスクもありますが、過度に楽観視されてきた国内企業業績の適正化過程と言えそうです。ゴールデンウィーク前後は決算発表に加えて米国経済指標の発表、米FOMC(4/30-5/1)もあり、予断を許さない状況が続きそうです。誠に遅まきながら、ポジション調整を行ってゴールデンウィークはゆるりと過ごしたいと感じます。

 


 

 

この記事を書いている人

藤根 靖昊(ふじね やすあき)

  • 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
  • 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
  • 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
5th Stage Lab「シン・日本株投資」   アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
短期の業績変動や株価のブレに惑わされることなく、何が本質であるかを見極められる「自律した投資家」を目指していくための気構えやスキル、実例解説などをお伝えしていきます。
本資料は、アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づいて作成しておりますが、正確性の保証は致しかねます。情報が不完全または要約されている場合もあります。本資料に記載する価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。また、第三者による人為的改ざん、機器の誤作動などの理由により本情報に誤りが生じる可能性があります。 本資料は、情報の提供のみを目的としており、金融商品の販売又は勧誘を目的としたものではありません。また、本資料は将来の結果をお約束するものではありません。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料の情報に基づいて行われる判断について、当社は一切の責任を負いません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねます。 本資料の著作権は、原則として当社に帰属します。本資料の転用、複製、販売等の一切を固く禁じております。

このページのトップへ