決算発表で、過度に楽観視されていた企業業績見通しの適正化(バリュエーション調整)が図られる
13日に、イランは無人機やミサイルによるイスラエルへの攻撃を行いました。これに対するイスラエルの反撃が予断を許さない状況で、19日にイラン国内で爆発音があったとの報道から同日の日経平均株価は一時1300円超の下落となりました。しかしながら、13日のイランの攻撃は事前通告されていたものであり、19日のイスラエルとみられる反撃もかなり限定的なものにとどまっており、あくまでも両国の国内強硬派を抑止するための行動との見方が広がっています。21日にイランの最高指導者ハメネイ師は「標的に命中した数は重要ではない、重要なのはイランが力を示したことだ」と攻撃の終結を匂わせる発言を行ったことも注目されました。一時85ドル台に上昇した原油価格(NY)は、足元では82ドル台で推移しており、戦火が拡大するとは見ていないようです。
先週、最も市場を揺るがしたのは、オランダASML(17日)と台湾TSM(18日)の決算でした。ASMLの1-3月決算は市場予想を下回り、4-6月期見通しも市場予想を下回りました。TSMCの1-3月期は売上・利益ともに過去最高の好決算でしたが、2024年の半導体市場全体の見通しを引き下げました。これにより半導体関連銘柄が急落しました。日本企業も週間の株価で、レーザーテック(6920)▲20.7%、ソシオネクスト(6526)▲17.8%、東京エレクトロン(8035)▲15.1%と大幅な下落でした。
今週は、26日に3月の米個人支出(PCE)物価指数が公表される。15日に発表された3月の米小売売上高が前月比+0.7%と市場予想(+0.3%)を大きく上回り、FRBの利下げ期待が後退している。米長期金利(10年債)は4.6%台に高止まりしており、そのため円安圧力を高めています。25-26日の日銀金融政策決定会合では政策変更は見込まれてはおりませんが、警戒感から買戻しに動きづらい相場が予想されます。会合後の総裁会見では円安対策に関する質問が集中するものと思われます。
17日に発表された貿易統計(3月)は、輸出が金額ベースで前年同月比+7.3%でしたが、数量指数では▲2.1%と2カ月連続のマイナスとなりました。前年同月と比べて10.7%円安であったことを鑑みれば実体的には楽観できる輸出状況にはないことが伺えます。現在の株価下落は米国株式市場の影響や地政学リスクもありますが、過度に楽観視されてきた国内企業業績の適正化過程と言えそうです。ゴールデンウィーク前後は決算発表に加えて米国経済指標の発表、米FOMC(4/30-5/1)もあり、予断を許さない状況が続きそうです。誠に遅まきながら、ポジション調整を行ってゴールデンウィークはゆるりと過ごしたいと感じます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。