日本市場の変革はいかに

2024/04/24

・東証が企業に要請した改革は、成果を一段と発揮してくるだろうか。1989年12月末の日経平均は38915円、TOPIXは2884.8、いずれも史上最高値であった。あれから34年、遂にピーク更新を実現した。さらに上昇するには、上場企業の踏ん張りにかかっている。

・当時、2つの見方があった。1つは、明らかにバブルであり、これが剝げるので、大幅下落は不可避である。これが現実となった。もう1つは、いずれ業績がついてくるので、調整局面は克服できるという意見であった。これが30年も続いた。

・昨年3月に、東証は「資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応」をプライム・スタンダード市場の上場企業に要請した。これはインパクトがあった。しかし、その後のフォローアップをみると、実際に対応策を開示している企業はまだ十分でない。

・何を対応せよと言ったのか。まずは、現状を分析せよ。資本コストや資本収益性を把握して、取締役会で確認する。財務分析としてのデータはすぐに出せようが、なぜそうなっているかの要因分析となると簡単ではない。なぜできないのかと、自らに問うことになる。不都合な現実にきちんと向き合う必要がある。

・次に改善計画を策定し、それを開示せよ。改善の方針・目標・期間を策定し、投資者に分かり易く開示することが求められている。資本コストを上回る資本収益性をいかに達成するのか。ES(エクイティ・スプレッド)=ROE-CC(資本コスト)であるから、ROEの目標を定めて、それをどう実現していくかの戦略を立てる。

・財務戦略にとどまらない。全社的な経営戦略も見直しが必要である。しかも、PBR=ROE×PERであるから、ここには株価が入ってくる。株価はマーケットが決めるものと傍観しているわけにはいかない。

・第3に、その計画を実行せよ。投資者との積極的な対話を実施していく。マーケットで株を売買するのは投資者である。企業価値は株価に反映される。株を買うのは投資者である。投資者が企業に魅力を感じ、価値向上が期待できるとなれば、株を買ってこよう。ここに、対話を通してアピールできるか。

・まずはアピールできる中身を作り、それを実現する。前進していることをKPIで示していく。外部環境の変化に左右されて、すぐに絵にかいた計画に終わってしなうようでは信頼されない。言い訳は通りにくい。自信のない経営者は計画の開示や対話を躊躇してしまう。

・つい、不言実行で行きたくなる。不言実行では、社内の共感も得られにくい。やはり、有言実行、ステークホールダーの皆を巻き込んで、実現していく仕組み作りが求められる。

・東証は、個々の上場企業の開示状況をフォローするとともに、こうした要請を反映する企業を中心にしたインデックスを開発した。「JPXプライム150指数」である。

・これは本物か。価値創造に優れているのだから、TOPIXよりパフォーマンスがよくなければ意味がない。そうなるかを中長期でみていく必要がある。

・150社はどのように選定されたのか。プライム市場で時価総額上位500社からES(エクイティ・スプレッド)基準で上位75社、PBR 1倍以上で上位75社を選んだ。ESがプラスで、ROEは8%以上、PBRは2期の数値でみている。ESは資本収益性でしっかり価値を作っているかを測る。PBRは非財務情報も織り込んだ市場の評価を示している。

・定期的に銘柄の入れ替えも行っていく。JPXプライム150は、時価総額でプライム全体の5割をカバーする。設定時で見ると、ROEは15%で、TOPIXの8.3%を上回る。S&P500も15%なので、同等である。

・PBRは2.6倍で、TOPIXの1.2倍を上回っていた。S&500は3.1倍であったから、まだ差が大きい。EPS成長率(5年平均)は11%で、TOPIXの4.0%を上回り、S&Pの7.9%も上回る。

・過去7年のデータでみると、JPXプライム150の対TOPIXに対するトラッキングエラー(乖離度合い)は3.2%であった。つまり、TOPIXとは違ったパフォーマンスを示している。また、過去10年の属性でみると、大型株(サイズ)、成長株(グロース)に対してプラスの連動があり、割安株(バリュー)に対しては、マイナスの連動を示した。

・こうみてくると有望そうである。2つの視点があろう。1つは、これらの150社は価値創造で先行している企業である。むしろ出遅れて問題にされた企業が本気を出してくるならば、そちらのパフォーマンスの方がこれからよくなるのではないか。

・もう1つは、先行企業の価値創造はすでに株価に織り込まれてしまっているので、パフォーマンスでリードすることが難しいのではないか。あるいは、S&Pの方が世界をリードする成長企業が入っているので、やはり日本負けてしまうのではないか。これらの懸念があろう。

・まずは中長期的にみていく必要がある。その意味では、JPXプライム150に連動するETFとS&P500に連動するETFに投資して、その動きをフォローしたい。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所   株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。

このページのトップへ