イタリアとドイツが示したユーロ圏の実力

2018/03/07

的外れだったユーロ悲観論 

5年ほど前まで、経済圏としてのユーロは失敗、という声が幅を利かせていました。しかし今や、そうした見方は説得力を失っています。ユーロ圏の経済成長率は一昨年と昨年、米国を上回ったのです。

政治面では、各国のナショナリズム(国粋主義)が欧州統合を脅かす、と懸念されたものです。しかし昨年5月のフランス大統領選で極右が敗北したことなどから、その懸念もひとまず和らいでいます。

欧州統合の行方は?

ただし、完全に安心することはできません。とりわけ政治面では試練が続くでしょう。欧州統合は、近代国家の枠組みを変更する壮大な試みです。そうした大変革が何の抵抗もなく進むはずはありません。

3月4日には、二つの大きな出来事がありました。一つは、イタリア総選挙という、ユーロ圏における今年最重要のイベントです。もう一つは、ドイツの連立政権樹立へ向け、合意が成立したことです。欧州統合の観点からは(よって通貨ユーロの信認という点で)、特にドイツの方はポジティブな動きです。

イタリアの政局不安は続きそうだが・・・

イタリア総選挙は、三つの勢力による争いとなりました。与党・民主党を軸とする左派、ベルルスコーニ元首相が率いる「フォルツァ・イタリア」などからなる右派、そして新興政党「五つ星運動」です。

結果は、いずれも過半の議席に必要な票を得られませんでした(図表1)。そのため連立が模索されますが、各党の思想的違いは大きく、どんな政権になっても不安定な政局が続きそうです(この国では見慣れたことですが)。ただ、選挙後、イタリアの金利上昇(信用力悪化、図表2)や株価下落は比較的小幅です。ユーロの信認が向上した今、政治イベントに対し、市場は過剰に反応しなくなっているのです。

「五つ星運動」には正しい部分も

今回の選挙で一番注目されるのは、「五つ星運動」の躍進です(政党としては最多票を獲得)。この党はポピュリズム(大衆迎合主義)に立つと言われ、市場や国外でのイメージはあまり良くありません。

しかしその主張には、正しい部分も認められます。元来これは極右でも極左でもなく、政治の腐敗や特権に怒りを覚える人々の反エリート運動です。経済面の不満も運動を後押ししました。イタリアの景気は回復基調ですが、実感を伴いません(先進国共通ですが)。また、この党が表明していた反ユーロや反移民は、すでにかなりトーンダウンしています(ただし、三番目の票数を得た「同盟」は依然そういった主張を展開)。よって昨年からのユーロ高・ドル安トレンドは、当面、大きくは変わらないでしょう。

ドイツの連立政権発足で、欧州統合はさらに深化へ 

一方、昨秋の総選挙後、暫定政権となっていたドイツでは、ついに来週、政権が正式に発足しそうです。従来どおり、キリスト教民主・社会同盟と社会民主党の大連立です。社会民主党は欧州統合に前向きなので、その政権入りは明るい材料です。しかも同党は、財務相などの重要ポストを得る見込みです。

それでも米英や日本では、メルケル独首相の後継争いなど、不透明な材料を強調する言説が多いようです。しかしバランス感覚を保持するドイツ、政治腐敗に立ち向かうイタリアをみると、ユーロ圏の実力は侮れない、と感じられます。よってユーロは、極端な悲観論を引き続き裏切ることになるでしょう。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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