ジンバブエの政変と独裁者の末路

2017/11/22

事実上のクーデター勃発

アフリカ南部に位置するジンバブエは、2000年頃からの約10年間、経済が大混乱したことで有名です。特に、物資の不足と通貨の乱発に伴うハイパーインフレは、信じがたい水準に達しました(図表1)。

この国が今、再び注目されています。37年間にわたり独裁を行ったムガベ大統領が、劇的に、しかし意外にあっさりと、昨日辞任に追い込まれたからです。ムガベ氏は、政敵弾圧や不正選挙などで世界に悪名を轟かせています。その人物の統治が、国軍による事実上のクーデターによって幕を閉じたのです。

独裁者の追放を国民も歓迎

与野党の主な政治家、そして多くの人々も、大統領の退陣に対し歓喜の叫びをあげています。そのように国軍と国民が団結しているので、流血沙汰は起こっていません。先週末には、数万人規模の反大統領デモが首都ハラレで行われました。これについても、退陣の前祝いというムードが感じられました。

長年の圧政と生活の困窮を受け、変革が待望されているのでしょう。独裁者が平和裏に追放されるのは、法的には多少疑義があっても、まずは歓迎すべきです。他国も、総じて静観の構えを見せています。

英雄の転落

ただし、ムガベ氏は「独立の英雄」です。英国の植民地だったジンバブエを、1980年、独立へ導いたのです。「白人からの解放者」という点で、アフリカの歴史的偉人であることに変わりはありません。

若き日のムガベ氏は、アフリカの解放、共産主義の実現といった理想に燃える闘士でした。しかし、多くの革命家や英雄がそうであるように、絶大な権力を握り続けるうちに、権力の維持自体が目的化してしまいました。そして目に余る縁故主義(親族や追従者の優遇)のため、民心が離れていったのです。

真の民主化は遠い

93歳のムガベ氏は、体力の衰えが顕著です。そのため、夫人のグレース氏に大統領職を引き継ごうと画策していました。しかし国が困窮する中、この夫人は贅沢三昧に耽っているので、悪評が絶えません。

国軍などは、ムナンガグワ氏という人を次期大統領として支持しています。副大統領だった同氏は先々週、ムガベ氏によって突然解任されました(グレース氏の入れ知恵か)。この解任が、クーデターのきっかけとなった模様です。ただしムナンガグワ氏は、ムガベ氏以上に冷酷な人のようです。よってムナンガグワ氏が大統領になったとしても、ジンバブエが今よりも民主的な国になる保証は、全くありません。

なぜジンバブエに注目するのか?

経済の低迷(図表2)も続くでしょう。たしかに、超インフレは一旦抑えられました(2009年に自国通貨の発行を停止し、米ドルを法定通貨に採用したため)。しかし、外貨獲得手段である農業の生産性は低く、工業化も立ち遅れています。真の民主国とは言えない以上、欧米の経済援助もあまり期待できません(ただ、民主主義へのこだわりが弱い中国や日本の援助は、ある程度期待できるかもしれません)。

ジンバブエは、独立後の歴史が浅い国です。そのため政治や経済は比較的単純で、人間の欲望が露出します。それだけに、この国からは普遍的な教訓が得られます(権力が腐敗していくパターン、政変が成功する条件、インフレの原因や脅威など)。そのような意味でも、今後の展開が大いに注目されます。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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