ポピュリズムに染まる国はどこか?

2016/07/27

ポピュリズムとは

欧米では、「ポピュリズム」が問題になっています。「大衆迎合主義」などと訳される言葉です。

しっかり定義すれば、「大衆の刹那的な欲望、現状への不満、根拠の疑わしい恐怖をあおり、利用し、既存の秩序や知識・知識人を否定する主義や運動」と言えるでしょう。通常、悪い意味で使われます。

英国のEU離脱は単なるポピュリズムとは言えない

英国では、6月に行われた国民投票で欧州連合(EU)離脱派が勝利しました。エリートを自認する人にとっては衝撃的だったようです。そういう人は、離脱派の動きをポピュリズムと決めつけています。

離脱を主張する人やそれに誘導された大衆は、経済や国益をわかっておらず、自分の利害しか考えていない、というのです。論理で考えることをせず、感情に振り回されている、などとも批判されます。

ただし、EUに残留した方がよいのか、本当のところはわかりません。離脱して経済・社会の枠組みを再構成した方が、英国の国益にかなう可能性もあります。残留派も結局、既存の秩序が変化することへの恐怖にとらわれているようです。したがって、残留派の方が理性的で客観的だとは断定できません。

トランプ氏の躍進にも理由がある

米国も、英国と似たような状況にあります。1980年代、英米では、新自由主義的な経済運営が始まりました。それは経済を活性化した半面、格差を広げる結果となり、社会の分断につながったのです。

そして11月8日の大統領選挙に向け、ドナルド・トランプ氏が共和党の指名を得ました。同氏の過激な発言は、国際化による産業構造の変化や既存のエリート支配に対する、不満の受け皿となっている面があります。そのためエリート層からは総じて不人気で、やはりポピュリズムだと非難されています。

しかし、格差是正は必要です。エリート層の固定化も由々しき問題でしょう。よって、トランプ氏の躍進を単なるポピュリズムだと軽蔑することはできません。また、反トランプが正義とも言い切れません。

日本の金融緩和期待こそポピュリズム的

このように英米で起こっていることは、ポピュリズムの一言で片づけられるほど単純ではありません。それに対し、ポピュリズムとしか言いようのない現象が、日本で、特に金融市場に関して見られます。

それは、日銀の金融緩和を熱望する「リフレ派」などのことです。そのような人が依拠するのは、株高で儲けたいという欲望、景気停滞への不満、追加緩和をしないと株価が暴落するという恐怖だからです。

しかし異次元の金融緩和は、実体経済、特に最重要の個人消費を押し上げたとは到底言えません。にもかかわらず追加緩和を望む声が絶えないのは、目先の株価が上がればよい、という動機からでしょう(実は、金融緩和と株高との因果関係は自明ではありませんが)。また、金融緩和により日本はデフレから脱して劇的に復活する、というリフレ政策がうまくいかなかったのを、ごまかしたいからでしょう。

ヘリコプターマネーの可能性は極めて低い

そしてついに、「ヘリコプターマネー(財政ファイナンス)」が堂々と主張されるに至りました。これは、政府と日銀との分離という先人の知恵を軽視し、政府が無節操に紙幣を印刷することを推進するものです。「お金が配られ、豊かになる」との幻想を与えかねませんが、実際には、円の信用を自傷します。国民の購買力や財政の健全性は、大きく損なわれるでしょう。

それが導入されれば、日本経済は、完全にポピュリストの手に落ちたことになります。しかし幸いにも、この国の良識は残っているようで、政府は今、ヘリコプターマネーには後ろ向きです。日銀も、政府の一部門になり下がるのを拒むでしょう。

 

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