中国GDPと李克強指数

2015/10/23

今週の国内株市場ですが、日経平均が21日(水)の取引で、これまで抜け切れなかった18,500円台に乗せとなりました。商いが少なめなのが気になりますが、市場のムードは悪くない印象です。

そんな中で今週注目されたのは、19日(月)に公表された中国の経済指標です。中国の経済指標は「まとめてドン」と公表される傾向がありますが、今回は9月分の工業生産、小売売上高、固定資産投資など月次ベースの指標に加えて、7-9月期のGDPが公表されました。

とりわけGDPに対する関心は、中国の経済減速に対する不安が夏場の相場急落の要因のひとつだったことや、前回の米FOMCの経験(利上げ見送り判断)の影に中国の景気減速がちらついていたこともあり、高いものがありました。

その中国GDP(実質)の結果は、前年同期比で6.9%増でした。政府目標(7%)を下回ったほか、リーマンショック後の2009年1-3月期(6.2%)以来の低さでした。ただし、大方の市場予想(6.8%増)よりはちょっとだけ強く、「中国経済の後退傾向は続いているけど、思っていたよりは悪くない」と受け止められたようで、注目度が高かった割には、結果を受けた世界のマーケットの反応は限定的だったと言えます。

ただし、この6.9%という数字を鵜呑みにする人は少ないと思われます。四半期終了後の2週間ちょっとで集計して公表するというスピーディーなスケジュール感自体がデータの信頼性に不安を覚えますし、李克強首相が遼寧省の党書記時代(2007年)に、「基本的に中国の経済統計は人為的なのであてにならないものが多い」と発言したのは有名な話です。

確かに、6.9%というGDPの数字は中国の経済実体を正確に表しているとは言えませんが、逆を言えば、中国当局の意図などが反映されており、その結果6.9%になっていると捉えることができます。個人的には今回のGDPはもう少し低い6.7%ぐらいを想定していました。今後は来週開催の5中全会や12月の中央経済工作会議などで中長期的な経済政策が打ち出される見込みがあることや、短期的にも預金準備率の引き下げ等の対応などで景気を下支えし、次のGDP(10-12月期)を7%に近い数値にもってくるのではと見込んでいました。

「我々がちょっと頑張れば、想定通り7%前後の成長率目標は達成できますよ」というストーリーをアピールするというシナリオを描いていたわけですが、ただし、実際は強めの数値が出て来ました。8月の人民元切り下げが思わぬ影響を与えてしまった記憶が鮮明なせいか、今回のGDPを低めに出すことに対する恐怖が中国当局にあったのかもしれません。また、実態はあまり余裕がないことがうかがえ、6.9%は意外と弱い数値と見ることもできそうです。

とはいえ、ある程度の「実際の中国経済の状況はどうなのか?」は知りたいところです。そこで注目度が高まっているのが、「李克強指数」と呼ばれるものです。先ほどは李克強首相の過去の発言を紹介しましたが、その時に「まあ、信頼できる指標」として、鉄道貨物輸送量、電力発電量、銀行融資残高の3つを挙げています。実は李克強指数の定義は曖昧なところがあり、これら3つを総称したものを李克強指数と呼んだり、3つの指標を統合してGDPと比較しやすいものに加工したものを李克強指数と呼んだりすることもあるようです。

定義の話はこのぐらいにして、李克強指数から見た中国経済は、9月の人民元建て融資残高は前年同期比で15.4%増と比較的堅調ですが、同じく鉄道貨物輸送量は約10%減、発電量は約3%減となっており、解釈の違いがあるにせよ、中国の経済状況はGDPの結果と比べて悪いものになっています。

ただし、李克強指数も万能ではなく、中国の貨物輸送に占める鉄道の割合は約10%で、現在はトラック輸送が中心であることや、今後は重厚長大の産業からサービス業が台頭していく中で電力消費の増減が景気に与える影響が低下することが見込まれることなどを踏まえると、李克強指数を信頼し過ぎるのもやや危うい面があります。同氏の発言は2007年当時のものですから、トラック輸送量を加味したり、相手国があるためにあまり数字の操作ができない貿易統計も考慮するなど、現在の状況に合わせて見ていく必要があります。

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楽天証券経済研究所 土信田 雅之が、マクロの視点で国内外の市況を解説。着目すべきチャートの動きや経済イベントなど、さまざまな観点からマーケットを分析いたします。
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