今年好調なアセットクラスは何か

2016/10/27

市川レポート(No.314)今年好調なアセットクラスは何か

  • 年初の原油安や年央の英国民投票などで市場が動揺しても、成績良好なアセットクラスがある。
  • 例えばハイイールドと新興国株は2ケタ上昇、投資適格社債や新興国ソブリンも堅調推移が続く。
  • これらアセットクラスの動きを決定付けたのは、米早期利上げ観測の後退とコモディティ価格の上昇。

年初の原油安や年央の英国民投票などで市場が動揺しても、成績良好なアセットクラスがある

世界の金融市場は、年明け以降、中国の景気減速や原油安への懸念からリスクオフ(回避)の動きが強まりました。主要国では緩和的な金融政策が続き、日銀は1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」、9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入、欧州中央銀行(ECB)は3月、イングランド銀行(BOE)は8月に追加緩和を決定しました。そして米連邦準備制度理事会(FRB)も利上げに慎重な姿勢を維持しました。

なお英国では6月に国民投票が行われましたが、欧州連合(EU)離脱選択という結果となり、ドル円は一時1ドル=99円02銭水準までドル安・円高が進行しました。このように金融市場は今年何度かリスクオフに傾く場面がみられましたが、そのような状況でも相対的に良好なパフォーマンスを示すアセットクラスがあります。そこで今回のレポートでは、主要アセットクラスについて、年初から足元までのパフォーマンスを検証し、比較してみます。

例えばハイイールドと新興国株は2ケタ上昇、投資適格社債や新興国ソブリンも堅調推移が続く

主要アセットクラスについて、2015年末から2016年10月26日までのパフォーマンスを図表1の赤枠内にまとめました。なお参考までに2012年から2015年の年間パフォーマンスも図表1に掲載しています。今年については、今のところハイイールド債券と新興国株式が上位グループを占め、いずれも年初来2ケタ上昇するなど、非常に好調です。

中位グループには、投資適格社債、新興国ソブリン債券、リートが並びました。世界的に超低金利環境が続くなか、利回りを追求する投資マネーが、これらのアセットクラスを選考したものと推測されます。また原油価格が年初の下げから持ち直したこともあり、コモディティも中位グループにランクインしました。一方、国債や先進国株は相対的に低調なパフォーマンスとなっていますが、プラス圏にはとどまっています。

これらアセットクラスの動きを決定付けたのは、米早期利上げ観測の後退とコモディティ価格の上昇

今年は、①米早期利上げ観測の後退、②コモディティ価格の上昇、この2つが相場の流れを決定付けたと思われます。①によって米長期金利が低下したため、投資マネーの利回り追求の動きが強まり、またドル安進行で相対的に新興国通貨が上昇し、新興国に投資マネーが向かいやすくなったと推測されます。そして②は、資源を産出する新興国にとって通貨高要因であり、通貨の上昇が株式などの資産価格安定につながったと考えます。

さて年内を展望した場合、①と②に変化をもたらす可能性がある重要イベントとして、11月8日の米大統領選挙、11月30日の石油輸出国機構(OPEC)総会、そして利上げが予想される12月13日、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が挙げられます。いずれも大きな波乱なく通過すれば、図表1の赤枠内のランキングに大きな変化はないと思われますが、最後まで注意が必要です。

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 (2016年10月27日)

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