決着!フランス大統領選挙:世界秩序は安泰なのか?

2022/04/25

マクロン勝利

フランスは、金融市場をひとまず安心させました。24日に行われた大統領選挙(決選投票)で、現職のマクロン氏が勝利したのです。2期目に入る同氏には、欧州結束を促す上で、大きな期待がかかります。

敗北したのは、「極右」とされるルペン氏です(図表1)。同氏は、心底ではまだロシアのプーチン大統領に親近感を持っているはずです。また、欧州連合(EU)の統合深化を望んでいません。そのような人物が大統領選挙で敗北したことは、現行体制の存続を意味し、市場の安定という観点からは良い材料です。

5年前を想起

ただし、ルペン氏が勝利する可能性も皆無ではありませんでした。その場合、1958年から続くフランス第5共和政において、はじめての極右政権誕生です。それが回避されたことの意味は、極めて重要です。

フランスは、第2次大戦後の世界秩序が激変する可能性を、今回も低下させたのです。すなわち、2017年の大統領選挙でも、マクロン氏がルペン氏を破ったのです。それは、英国の国民投票でのEU離脱派勝利(2016年夏)、米国の大統領選挙におけるトランプ氏勝利(同年秋)、と続く流れを押しとどめました。

右傾化なのか?

ただ今回、マクロン氏とルペン氏の得票率差は、2017年に比べると僅差でした。また、10日に実施された第1回投票では、ルペン氏より過激な極右とされるゼムール氏が、4位の得票率(7%)を得ました。

もっとも、それらを見て、フランスにおいて「右傾化(国粋主義化)」が進んでいる、と考えるのは正しくありません。第1回投票では、マクロン氏(28%)、ルペン氏(23%)に続き、「極左」とされるメランション氏が22%の得票率を得たのです。これこそは、第1回投票における最大の驚くべきことでした。

主流派の勝利

つまり、フランスで起こっているのは、右傾化でも左傾化でもなく、メインストリーム(主流派)vsエクストリーム(極端な反主流派)の対立です。今回のマクロン氏勝利は、主流派勝利を一応は意味します。

また、右派・保守派vs左派・リベラル派という単純な図式も、適切でなくなりつつあります。実際、マクロン氏、ルペン氏とも、自分は右でも左でもない、と言っています。たしかに、社会・文化面ではマクロン氏が左派、ルペン氏が右派ですが、経済面では前者は右派的、後者が左派的と、様相は今や複雑です。

安心できるか?

経済面でルペン氏が左派的、と言うのは、同氏は選挙戦で、中低所得層の生活苦を和らげるのを強調したからです。一方、マクロン氏が推進してきたのは、規制緩和や労働市場の流動化など、右派的政策です。

そうしたマクロン氏の政策などで、フランスの失業率は低下しました(図表2)。コロナウイルスについては、人口あたりの死者数は米英と比べれば抑制されました。そのような功績にもかかわらず、マクロン氏は今回やや苦戦したのです。つまり反主流派を侮ることはできず、世界秩序も安泰とは言い切れません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ