スウェーデンの壮絶な失敗:感染抑止を経済よりも優先すべき理由
コロナウイルス対策に失敗
スウェーデンは、民主主義と平和を愛する、北欧の洗練された国です。しかし新型コロナウイルスへの対処では、失敗の代表例になってしまいました。その壮絶な失敗から、学ぶべきことも多いはずです。
このウイルスによる人口あたりの死亡者数は、北欧4か国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド)の中で、スウェーデンが突出しています(図表1)。それどころか、世界で最多の局面もありました。また、新規感染者数は、依然増加しています(これについては、感染検査の積極化も影響)。
ハードなロックダウンを回避
ほかの北欧諸国とは違い、スウェーデンは、ハードなロックダウン(外出・営業制限など)を回避しました。当初、検査にも消極的でした。そうした方針が多大な犠牲をもたらしたのは、ほぼ明白です。
ただし、完全な放置ではありません。対人距離の確保は推奨され、特に高齢や病弱の人は、不要な外出を控えるよう要請されています。それでも他国に比べれば甘く、また、同調圧力が自粛を半ば強制する、日本的な社会風土とは異なります。そのため、気兼ねなく外出や外食を行う人が少なくありません。
民主主義と長年の平和が障害に
スウェーデンがソフトな(緩やかな)対策を採用した理由として、三つ考えられます。第一に、外出や営業の自由などを政府や他者が侵害すべきではない、という、民主主義を愛するがゆえの思想です。
第二に、歴史的な背景が挙げられます。第2次大戦時、デンマークやノルウェーはドイツに、フィンランドはソビエト連邦に侵攻されました。一方、スウェーデンは、存亡の危機を長年経験していません。それによる「平和ボケ」のため、国民が団結して危機に立ち向かう、との気風がやや乏しいようです。
専門家への信頼も裏目に
しかし、最も直接的なのは、第三の理由です。つまり、スウェーデンの国民は医療の専門家を非常に信頼しているのですが、その専門家チームが、新型コロナウイルスの脅威を甘く見すぎていたのです。
対策を主導したのは、多くの人から尊敬される疫学者、アンデシュ・テグネル氏です。同氏の基本方針は、ソフトな対策で感染を抑えつつ、人々が自然に免疫をつけるか、ワクチンが実用化されるのを待つ、という悠長なものだったのです(ただ、同氏は最近、一連の対策には改善余地がある、と若干反省)。
感染抑止に失敗すれば、経済も沈む
ソフトな感染対策を選んだにもかかわらず、スウェーデン経済は好調、とは全く言えません。失業率は大幅に高まり、今年の成長率は、ハードな対策を採用した国々と同様に落ち込む見通しです(図表2)。
これは、感染リスクが残っていることから、消費や投資が慎重化しているためです。また、ほかの北欧諸国などが国境を順次再開する中、スウェーデンは当分、対象外です(→観光関連などを圧迫)。結局、感染抑止に失敗すれば、国民の不安は消えず、他国からは信用されず、したがって経済も沈むのです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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