統合か分裂か?:コロナショックはEU統合を促す

2020/05/26

苦境に立つ欧州

この宇宙では、「統合へ向かう動き」と「分裂を促す動き」が、常に競い合い、せめぎ合っています。コロナショックに襲われた世界では、そうした相反する動きのうち、どちらが優位に立つのでしょうか。

特に注目されるのは、欧州連合(EU)の行方です。27か国の集合体であるEUは、統合と分裂の間で、絶えず揺れ動く宿命にあるからです。しかもEUでは、新型コロナウイルスによって多数の人命が失われています(図表1)。さらに、ユーロ圏は現在、発足以来で最悪の不況に陥っています(図表2)。

「EU復興基金」

ウイルスの感染を抑止すべく、EU各国は3月以降、加盟国間の移動を制限しました。やむを得ないとはいえEUの分裂を促しかねない措置であり、長引けば、移動の自由というEUの理念を損ないます。

しかし5月18日に生じたのは、逆に統合へ向かう驚くべき動きです。独仏の首脳が「EU復興基金」の設立案で合意したのです。その実質は、コロナショックで大打撃を受けた国や地域に対し、ほかのEU加盟国が連帯して財政支援を行うというものです。この案が実現すれば、欧州統合への大前進です。

どこが画期的なのか?

より具体的には、EUが債券を発行し、これで調達した5,000億ユーロ(約59兆円)を、被支援国に給付します。過去の支援策との違いは、被支援国が返済義務を負う融資でなく、交付金である点です。

ただ、債券である以上、投資家に元利金を支払わねばなりません。その財源は、被支援国でなくEUの予算から手当てされます。EU予算については、加盟国の拠出金から成っています。したがって事実上、窮地に陥った国を支援するため、EU加盟国の納税者が共同で負担を引き受けることになります。

財政統合、そして政治統合へ

換言すれば、経済の強い国から弱い国への資金移転です。こうした再分配は財政政策の機能であり、政治的な判断を伴います。よって今回の案は、EUの財政統合、そして政治統合を前進させるものです。

こうした案には従来、ドイツが強く反対してきました。経済が強く財政の健全なドイツが、財政節度を欠くイタリアなど南欧諸国を救済することになるためです。それだけに今回、フランスが主導したこの案にドイツが歩み寄ったのは、驚くべきことです。これは、金融市場でも前向きに理解されました。

EUの結束は固い

ただし、この案の実現には、全加盟国の承認が必要です。すでに、財政規律に厳しいオランダなどが反対の姿勢をみせているため、給付と融資の混合や、給付条件の厳格化といった調整を要するでしょう。

また、この案はコロナショックに対処するための一時的措置とされ、恒久的な財政統合までは明示されていません。それでもEUが危機に陥ったからこそ、これを守り抜くという意志を、EU二大国であるドイツとフランスが示したのです。コロナショックは、分裂よりも統合を促す力を喚起し得るのです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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