脱ロックダウン:その国のリーダーに責任感と決断力はあるのか?

2020/05/08

ロックダウンは、導入よりも「出口」が難しい

物事は、始めるよりも終える方が困難です。各国が導入したロックダウンについても、例外ではありません。それをいかに緩和していくのか。この出口戦略は容易ではなく、賭けの要素が付きまといます。

なお、ロックダウンとは、新型コロナウイルスの感染を抑止するための、外出の制限や休校・休業などを指します。その意味で、日本もロックダウンを導入しているのです。ただ、日本の場合、強制力の弱い「自粛要請」(矛盾した奇妙な言葉ですが)なので、緩やかなロックダウンと言うべきです(図表1)。

厳しいロックダウンには、もう耐えられない

新型コロナウイルスの感染数が際立って多い欧米諸国では、3月から、厳しいロックダウンが導入されました。おそらくその効果もあり、4月以降、感染者や死亡者の増え方はたしかに鈍化しています。

とはいえ、ワクチンは開発途上で、集団免疫が得られた証拠もありません(なお、コロナウイルスの抗体に関する研究は十分でなく、集団免疫を目指すのは危険)。しかし、永遠にロックダウンを続けるわけにはいきません。雇用や所得、国・地方の財政、子供の学習などに、大きな悪影響を与えるからです。

出口戦略への金融市場の期待は、やや行き過ぎ

このため4月下旬以降、欧米を中心に、ロックダウンを緩和する動きや議論が広がっています。世界が不況に陥る中でも、主要国の株価が案外底堅いのは、そうした出口戦略が期待されているためです。

ただしロックダウンの緩和は、データを確認しつつ慎重に進めねばなりません。よって、過度な期待は禁物です。ウイルス流行前の日常に戻るには、最低でも数か月はかかります。気を緩めた途端、あるいは秋以降に気温が下がったとき、ウイルスの第2の波が襲いかかる、という可能性も否定できません。

米国人の大半は、ロックダウンの解除に対し慎重

米国の多くの州でも、ロックダウンの緩和が始まりました。ウイルスの検査体制などが不十分な中での、見切り発車です。解雇が容易な米国では失業者が激増し、財政で支え切れなくなってきたのです。

ただ、米景気が鮮やかな回復傾向を示すのは、早くても7月以降でしょう。雇用や所得が損なわれているため、需要がすぐに戻るとは考えにくいからです。また、多くの人は、他人と接近する状況をかなり恐れています(図表2)。よく報じられる「ロックダウン反対」のデモは、小規模な動きにすぎません。

綿密な計画が必要だが、最後はリーダーの責任

厳しいロックダウンを導入したイタリア、フランス、スペインも、それを緩和していく方針です。ただし、ウイルスの感染・回復状況、検査能力や病床数を確認しながらの、綿密な計画に基づく緩和です。

ロックダウンについては、どれだけ役立ったのか、定かでありません。緩和が成功する保証もありません。コロナウイルスには不明な部分が多いので、対応には賭けの要素が必ず残るのです。それでも自分の責任で決断し、自らの言葉で方針を明瞭に説明する。これがリーダーたる者の務めであるはずです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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