東南アジア取材報告④:マレーシアは偏見や通念を打ち破る
「異民族の共存は不可能」は、誤り
マレーシアについては、鮮烈なイメージが浮かばないかもしれません。これは、同国にとり不名誉なことではありません。突出し過ぎた部分が少なくバランスのとれている点が、この国の長所だからです。
優れたバランス感覚を表すのが、多民族の共存です。多数派は人口の6割超を占めるマレー系ですが、約2割の中国系、1割未満のインド系なども存在し、現在、深刻な対立は特段みられません。異民族の共存は無理、という世界中の右派が持つ固定観念に対し、マレーシアは明確な反証を示しているのです。
「イスラム教は非寛容で攻撃的」は、偏見
国教は、主にマレー系民族が信仰するイスラム教です。中世のアラブ商人が、この一神教を伝えたのです。ただし信教の自由が認められ、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教なども平和的に共存しています。
一部の過激派によるテロのため、イスラム教は攻撃的、との偏見が世界には存在します。しかし経典『コーラン』には、異教徒との共存を説く箇所もあります。それに則った本来の穏健なイスラム教が、マレーシアで実現しているのです。他国から来た人が宗教上の不都合を感じることも、まずありません。
「マレーシアは輸出に依存」は、誇張
マレーシアのイスラム教徒は戒律(禁酒など)を順守していますが、人生の基本的な楽しみ方は、非イスラム教徒と大差ありません。例えば、人々は買い物を大いに楽しみ、服装や料理にも凝っています。
現在の景気も、旺盛な消費意欲に支えられています。マレーシアの国内総生産(GDP)に占める消費は6割弱と、日本並みに高く(日本も実は消費中心。図表1)、輸出のみに頼っていないのです。米中貿易摩擦などのため輸出は確かに不調ですが、それだけで景気が後退するとの認識は正しくありません。
「原子化した(ばらばらの)個人」を前提とする理論は、不適合
ただ、買い物を楽しむあまり、貯蓄率は下がっています。公的な年金・医療保険も、老後や病気のリスクをカバーするには不十分です。にもかかわらず、マレーシア人の多くは将来に対して楽観的です。
背景には、家族や親族で助け合うことを当然視する文化があります。西洋流の個人主義とは一線を画す半面、「国」にも頼り過ぎていないのです。このような文化は、ほかのアジア諸国でも広くみられます。よって、孤立した個人と国の政策を軸に分析を行う主流派経済学では、アジアの現実を把握できません。
「中進国の罠(先進国になれず停滞する)」は、根拠薄弱
「中進国(中所得国)の罠」という概念も、アジア諸国に対し単純に適用すべきではありません。事実、それに陥ると思われた韓国や台湾は、中進国のまま停滞するどころか、今や日本並みの先進国です。
マレーシアの場合、中位年齢が29歳程度という若い国です。一人あたりの実質国内総生産(GDP)も、年3%以上の増加が続いています(日本は1%前後)。マレーシアは、様々な固定観念、偏見、通念を覆してきました。「中進国の罠」という根拠の弱い理論に関しても、必ずや打ち破ってくれるでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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