「トランプノミクス」に日本株はどこまでついていけるか?

2016/11/24

国内株市場は過熱感が指摘されながらも、米国の「トランプノミクス」による長期金利の上昇、ドル高・株高に牽引される格好で上昇が続いています。日経平均は今年1月以来の18,000円台を回復し、ようやく年初からの下落分を取り戻しそうな勢いです。

もっとも、足元のマーケットはまだ就任していないトランプ次期大統領の政策を先取りし過ぎていることや、ドル高と米金利上昇のネガティブ面(新興国への悪影響)がこれから顕在化する恐れなどもあるため、相場の調整が警戒される中、相場の勢いが試されている「チキンレース」のような印象です。

仮に、国内株市場が調整に入った際、果たして下げたところが絶好の「押し目」となるのかがポイントになりますが、下げ止まってから再び強い上昇に転じることができるかの見極めが重要になってきます。

そんな中、国内では今週月曜日(21日)に貿易統計が発表され、貿易収支は2カ月連続の黒字となりました。ただし、輸出額は円高の影響で自動車や鉄鋼を中心に減少し、5兆8,699億円と規模自体が縮小しているほか、輸入額も原油安や国内需要低迷などで大きく減ったことで、全体で黒字となった構図のため、あまり良い内容とは言えません。

また、貿易統計のちょうど一週間前には国内7-9月期のGDPが発表されました。実質GDP成長率は年率換算で2.2%増となったものの、名目ベースでの成長率は0.8%増にとどまり、デフレの要素が強いことや、個人消費や設備投資の伸びが低迷していること、成長率に寄与した外需も先ほどの貿易統計にもあるように、輸出が伸びたというよりは輸入が減少したことによることが大きく、楽観できる状況ではなさそうです。

トランプノミクスによるドル高・円安によって今後輸出が伸びる期待も高まりそうですが、円安の継続によって輸入物価が上昇、実質賃金が低下して消費がさらに抑制される可能性があります。また、冒頭でも触れたドル高と米金利上昇のネガティブ面(新興国への悪影響)が意識されれば、為替市場が日米金利差拡大による円安要因から、新興国不安によるリスクオフの円高要因に転じる恐れもあります。そもそも、「米国第一主義」を唱えているトランプ次期政権の政策が日本経済にどこまで恩恵があるのかも探っていかなくてはなりません。ちょうど今週、トランプ氏は「就任初日にTPPの離脱を通告する」と明言しています。

そのため、近い内に来るであろう相場の調整局面が再び下落基調に転じる可能性があり、押し目を積極的に拾うのではなく、調整後の戻りの勢いを確認してから動いた方が良いのかもしれません。

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