中国不動産業界の「ヤマ場」は半年後

2021/10/01

今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均は先週末から株価水準を切り下げての推移が続いています。とりわけ29日(水)は前日比で639円安と大きく値を下げています。米FOMC後の10年債利回りが急ピッチで上昇していることや、デッドシーリング(債務上限)をめぐる米議会の動向への警戒などを背景とした米株市場の下落を受けた格好です。

また、米長期金利上昇に伴って、為替市場もドル高基調となっています。こうした米金利の上昇やドル高の傾向は、先週からにわかに不安が高まってきた中国恒大集団や、新興国が抱えるドル建て債務の負担増にもつながってしまう可能性があります。

その中国恒大集団に絡む中国の不動産業界への債務問題ですが、一応、中国人民銀行が今週あたまの27日(月)に、「不動産市場の健全な発展と、住宅購入者など消費者の合法的な権利を守る」という発表をしていますが、恒大集団および不動産業界に対して中国当局がどのように対処するのかは不透明です。

ひとまず、目先の混乱を鎮める方向性で進むと思われますが、今回の一件で事が収まる可能性は高くはないと考えた方が良さそうです。そのポイントとしては、「習近平政権が蒔いた種が思わぬ展開になっている」かもしれないことと、「不動産業界の債務問題は約半年後にヤマ場がくる」かもしれないことです。

まず、前者についてですが、最近の習近平政権が、IT大手企業をはじめ、ゲーム業界や、教育産業、芸能界など、介入や締め付けを行っている状況がメディア等で報じられる事が増えましたが、不動産業界もその中のひとつです。

こうした習近平政権の動きは来年(2022年)秋に控えている中国共産党の党大会に向けた「地ならし」というねらいがあったと思われます。その党大会において、習近平は3期目となる国家主席(共産党総書記)に就任しようとしていますが、「210年」や「68歳以上なら引退」というこれまでの慣例を破るものです。

そのため、これまでの実績や民衆からの支持を通じて、自らの政権の正統性をアピールする必要があり、そこで、国民からの不満となっている、所得や教育の格差や不動産価格の高騰にメスを入れたわけですが、これが海外からは「文化大革命の再来ではないか?」といった警戒を招き、今回の中国恒大集団の債務問題のような、思ったよりも大きな副作用が浮上してしまった面があります。今後の対応によっては、政権基盤に影響を及ぼすことも考えられます。

また、後者の中国不動産業界の債務問題のヤマ場ですが、中国の調査機関(中国指数研究院)によると、足元の20219月は、不動産業界の債務返済額が約838億元(1.42兆円)とまとまっていた時期だったのですが、実は半年後の20223月と4月にも債務返済がピークを迎え、それぞれ、約1,039億元(1.77兆円)、約9,400億元(16.01兆円)と、さらに大きな額の返済が待っています。足元の状況でもすでに不安がマーケットを揺るがしていたことを踏まえると、中国当局は目先の対応だけでなく、今後訪れる債務返済のヤマ場に向けた対策も必要になってくると言えます。

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