プロの技術をご家庭へ 基礎から学ぶスマートベータ
1――はじめに
近年、株式投資においてスマートベータの注目度が急速に高まっている。現在のところプロ向け中 心だが、メディアで取り上げられる機会も急速に増えており、今後、個人にも浸透する可能性がある。
「もしファイナンス界に流行語大賞があれば、間違いなく2013 年の大賞」とさえ言われるスマートベ ータとはどんなものか。便利なツールだが使い方にはちょっとしたコツがある。
1|スマートベータの“スマート”と“ベータ”って何?
スマートベータの“ベータ”とは、株式投資の用語で“株式市場全体”といった意味あいである。
噛み砕いて表現するとTOPIX(東証株価指数)や米S&P500 など株価指数の収益率(騰落率)を“ベータ”、これを上回ったり下回った分を“アルファ”と呼ぶ。例えばある期間の株価指数の収益率が10%のとき、ファンドの収益率が12%ならベータ部分=10%、アルファ部分=2%という具合に使う。シンプルに「ベータ=株価指数」とイメージしても構わないだろう。
スマートベータを英語標記すると“Smart Beta”なので日本語では「賢い指数」とでも訳せばよいだろうか。もしくはスマートフォンを「高機能携帯電話」と呼ぶように「高機能指数」か。
では何が賢いのか。年金など機関投資家は株式投資のベンチマーク(運用成果の評価基準)にTOPIXや米S&P500 などの株価指数を用いることが多い。詳しくは後述するが、これら既存の株価指数は構造的な問題点が指摘されており、スマートベータはその問題点を改善できるとされる。また、スマートベータを利用すると、TOPIX 等を上回る収益率(アルファ)の獲得を目的とするアクティブ・ファンドに類似した株式投資を、より低い手数料で実現できる可能性がある。これらの理由から“スマート”と名づけられたようだ。
2|従来型の指数と何が違うのか ~ スマートベータの定義 ~
スマートベータは自然発生的に登場し広まった業界用語で、明確な定義はないと言われているが、ここでは「指数を構成する銘柄とその構成比率(ウェイト)」という観点からTOPIX などの従来型指数とどこが違うのかあえて定義してみたい。