何故コロナ禍が経済の長期展望を開くのか
~歴史的株高の根源的原因~

2021/02/15

【ストラテジーブレティン(273号)】

米国株式は連日のように史上最高値を更新している。株式投資アプリ「ロビンフッド」を使った個人投資家の集中的株式投資で株価は乱高下したが、その影響も1~2週間で消えた。日本株式も30年ぶりの高値に達し、日経平均3万円が目前に迫っている。高所恐怖症から株価はバブルであるとする議論は根強い。しかし、この強烈な株高は、コロナパンデミックが人類の新時代を開きつつあることを予見しているのかもしれない。
先ず2021年は短期景気ブームの加速が見込まれる。加えて全世界で欲望と貯蓄が堆積しており(いわゆるペントアップディマンド)、コロナパンデミック終息の暁にはその一気発現が見込まれる。鉄鉱石、銅、石油、海運運賃などの商品市況急騰、半導体などの在庫不足にその兆しが表れている。
より長期的にはイノベーションが加速することが見えてきた。コロナパンデミックはイノベーションの3条件、技術、市場(ニーズ)、資本(リスクキャピタル)を見事なまでにそろえた。すでにすべての人間活動をネットデジタル化する技術は存在し、潤沢な資本もあったが、ニーズが欠けていた。しかしコロナは在宅勤務、在宅授業、在宅診察など、大半のビジネスと生活をネット化する緊急必要性をもたらし、一気に市場ニーズが形成された。それによりDX化のトレンドが可視化され、イノベーションに先行すべく、デジタルネット革命での投資競争が展開されている。脱炭素、自動車のEV化の流れがそれをさらに加速させている。
しかしもっと本質的な変化は、労働形態多様化、労働時間の劇的な減少を引き起こす、と見られることであろう。物理的な集合労働、集合教育の時代が終わりつつある、リモートワーク、フレックスワーク、が常態化し、労働時間が劇的に減少するだろう。仕事の大半はいつでもどこでもアクセスできるネット上で行われるようになる。それによる労働時間の減少が消費力を大きく向上させるだろう。在宅勤務が常態化し、週休三日制を検討する企業も現れている。自民党が週休三日制を検討しているといわれている。これからよりダイナミックな労働時間短縮が展開されていくだろう。
歴史を振り返ると、労働時間は驚くほど低下してこなかった。ロシア革命の2年後の1919年、資本主義を守るために労働者の保護、労働条件改善の必要性が意識されるようになり、国際労働機関(ILO)が設立された。その1号条約では週労働時間の上限48時間がうたわれた。この週48時間労働が日本など主要国において、100年経ってもあまり達成されていない。100年で約10倍の労働生産性上昇が実現したにもかかわらず、人類の労働時間は殆ど変わっておらず、生産と消費のバランスが著しく崩れてしまった。これほど技術と生産力が高まったのに、労働時間だけは、中世からあまり変わっていないことは、不思議である。人類の歴史を振り返ると、日の出から日没まで働いていた中世より現代人の方がより長時間働いていたことがわかる。

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