米中貿易戦争下、中国の危機突破戦略は何なのか

2019/10/11

【ストラテジーブレティン(234号)】

人口14億人の中国が年率6%以上の実質成長を続けている。他方人口3億人の米国が先進国の中では突出しているとはいえ2%台の成長に甘んじている。この趨勢が続けば10年後の2028年には米中逆転は視野に入る。経済規模の逆転は、軍事力の転換を引き起こし、覇権国の交代をもたらす。この10年間の米中対抗は世界秩序の将来を予見するうえで決定的に重要である。

米中覇権争いの勝敗は一義的には軍事的優位性によって決まるが、軍事優位は経済力優位によって担保される。そして経済力は国際分業上の優位性によって決められる。国際分業上の優劣を決めるものが通商摩擦である。マクロ経済学者からは批判の多いトランプ・ナバロ氏が引き起こした対中貿易戦争は、国際分業における陣取り合戦であり、覇権国米国の国益に直結する決定的重要事項である、というものが筆者の考えである。

それでは米中貿易戦争の先に何が待っているのか、ここまで来た中国の跳躍、誰も想像すらできなかった。この先も誰もが想像できない将来が待っているかもしれない。そうした問題意識の下、以下3点を軸に全体像を俯瞰してみたい。

(1) なぜ中国はかくも驚異的な経済発展を遂げたのか、筆者は3つの稀有の条件が重なったためと整理する。(国際分業への参画=Globalizationの果実獲得、米国の支援、巨大な内需の形成)

(2) なぜ中国は困難に直面しているのか、過去の過剰成功が困難の種をはぐくんだ

(3) 中国に起死回生の妙手はあるか、筆者は一帯一路等対外進出、ハイテク覇権がそれだと考える。米中対抗の下でそれは可能なのかだが、中国の巨大な産業集積を考えれば、不可能とは言えない。しかし金融危機、体制危機にいたる可能性も考えられる。

米中対抗の中で日本の立場はどうなるのか、筆者は地政学的にも国際分業という観点からも、日本の優位性が高まっていくと考える。次回のレポートで日本の立場を詳述したい。

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