アベノミクスと企業戦略

2013/02/25

・昨年来、私は「日経平均2万円」といっている。‘なる’と予測しているのではない。2万円に‘する’ために、私たちはそれぞれの立場でどうするかを考えていく必要があるか、という意味である。では、どうすればよいか。方策はいくらでもある。数年前に、有名な個人投資家のジム・ロジャーズ氏は、どうすればよいかは世界にいくらでも例があり、方法があるのに、日本はどれもやりたくない、といっている。そして、みんなで仲良く貧乏になる道を選んでいる。信じられない、と言及した。彼にいわれるまでもなく、そんなことにはなりたくない。

・閉塞突破のためには、政府に文句ばかりを言っても仕方がない。日本は追い込まれているが、打つ手はある。優先順位を付けて、断固実行していくことが求められている。皆で仲良く貧しくなるのではなく、企業も個人も投資機会を大いに活かすべきであろう。

・今、変化の期待が高まっている。自民党政権は政策の舵を切ろうとしている。アベノミクスは期待先行であるが、動きは始まった。企業は、国の政策が動かなくても、国境を越えて事業活動を推進していく。しかし、国の政策が中期的な成長戦略を後押しするならば、企業活動はより活性化していく。企業こそ、日本の活力を生み出し、国力を高めていくことに貢献できる。その意味で、企業の経営革新が一段と求められる。

・日本の多くの企業は、まだ経営革新が不十分である。どこに問題があるのだろうか。4つの視点があろう。1つは、経営者のマネジメント能力が必ずしも十分でない。新しい人材をもっと登用して新陳代謝を図る必要がある。

・2つ目は、ビジネスモデルのイノベーションが不十分である。日本企業の現場は強いという見方は当たっているとしても、企業価値創造の仕組みが全体として色あせ、ほころびが出ていては十分戦えない。新しいビジネスモデルの設計図を描き、その実行戦略を的確に実践できているかどうかもつき詰める必要がある。

・3つ目は、サステナビリティ(持続性)を経営の根幹に据えているかどうかである。サステナビリティを狭い意味で、環境、社会、統治というESGに限る必要はない。社会的価値との共存を図りつつ、長期的に企業価値を生み出す活動を作り上げ、実践することである。

・4つ目は、リスクマネジメントである。何らかの事象が起きた時に、そんなことは想定していなかったというのでは、すまされない。自社でできること、できないことを仕分けしながら、不測の事態へのシミュレーションをできるだけ実施してほしい。

・日本の主要企業のROEはどのような水準にあるか。野村證券金融経済研究所のデータによると、2013年度には8%まで回復してくる。日本のROEの低さは、売上高利益率の低さにあり、回転率やレバレッジでは欧米企業とさほどそん色はない。

・私は常々‘ROE 8% を確保してほしい’と経営者に言っている。私の要求するROE 8.0% は、今からその株を買う投資家にとってのリターンであるから、時価ベースの修正ROEの方が妥当である。 時価ベースという意味は、純資産に株価を使うのである。

・米国を代表する企業の平均ROEは19.9%である。その時のPBRが2.99倍であるから、修正R0Eは6.7%である。日本の代表企業の平均ROEが5.8%で、PBRが1.03倍であるから、修正ROEは5.6% である。また、日本の魅力ある企業の平均ROEが13.2%で、PBRは2.35倍であるので、修正ROEは5.6%である。いずれも8% を下回っている。

・日米の違いは将来の見通しにかかっている。PBRが低いということは、将来の成長性が低いという現れでもあるので、この場合、日本の代表企業の方が相対的に劣っている。日本企業の経営者は、自社の修正ROEを頭に入れた上で、経営者として将来展望を描き、投資家にそれを語ってほしい。そうすれば、投資家も聞く耳をもつであろう。

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