ヘルスケアの恩恵

2024/12/16

・自らの体験から入ってみよう。朝方、急に心臓が圧迫されて、もうだめかという思いに至った。救急車を呼んでもらい、近くの医療センターに運ばれた。幸運にも、専門医が当直でおられたので、すぐにカテーテル治療を行い、一命をとりとめた。

・一週間前から心臓に圧迫感があり、前日にかかりつけのクリニックに診てもらった。血液検査でも特に異常はなかったが、先生がニトロ(ニトログリセリン)を出してくれて、発作が起きたらなめなさいと言われた。3回飲んでもダメな時は救急車を呼べと指示されていた。

・救急隊の方は、病状を細かく聞きながら、病院を探したようで、治療ができる適切な病院を探して運んでくれた。駒沢にある東京医療センターでは、すぐにチームを編成して、カテーテル治療に入った。

・これが遅いと危うくなる。後日、主治医から、この手の救急は3割が亡くなる。気を失って目が覚めない、それが死ですよ、と説明された。助かったことに本当に感謝した。

・いつ何が起きるかわからない。運、不運もあろう。しかし、予兆もある。健康診断を受けていたので、いろいろ注意すべきことは出ていた。そのための治療も受けながら、生活習慣を改めて、健康を維持することにも心掛けていた。

・体重を減らして、運動もしていたが、十分ではなかったかもしれない。楽しい飲食にも注意していたが、その楽しさに負けていたともいえよう。

・普段から「健康第一」をモットーにしているが、老化は着実に進んでいる。体重計に乗ると、若いという表示がでるが、カテーテルで血管の中を見ると、主治医からは、プラーク(脂肪や石灰などのかす)が溜まっており、80代の血管です、と言われた。こうなると、もっと慎重に大事に生きなくては、と心が引き締まった。

・高齢化と共に、日本の国民医療費と国民介護費はますます増大する。一方で、それを担う働き手の減少が続く。NRIの特集「バリューベース・ヘルスケアが変える日本の健康・医療」(NRI知的資産創造2024年2月号)では、その解決策について論考している。

・2018年の国民医療費は39.2兆円であったが、これが2040年には68.5兆円(+75%)へ増加する。国民介護費は同10.7兆円が25.7兆円(+141%)へ拡大する。一方で、就業者数は同6580万人が5650万人(-14%)へ減少する。

・その中で、「バリューベース・ヘルスケア」とは、医療サービスを単なる支払コストとして把握するのではなく、患者に提供された価値を重視して実践するアプローチである。

・治療効果だけにフォーカスするのではなく、病気になる前の未病の段階から関わり、治療の後のフォローにも目配せをする。医療費や介護費のコスト削減にのみフォーカスして、インセンティブを働かせるのではなく、治療効果の結果(アウトカム)を重視する。そして、医師や介護者の判断だけでなく、患者の主観的意見や状態にも注目する。

・提供するサービスの価値を患者がどのように判断しているかも含めて、価値を評価し、ヘルスケアの価値向上を図る。これがステークホールダーの行動変容に結び付き、ひいては課題解決によい効果をもたらすことを狙っている。

・バリューベース・ヘルスケアでは、1)予防、予後へ介入し、治療の負荷を軽減して、価値を高める、2)未病、予後も含めたアウトカム(結果)を評価する、3)価値評価に患者の主観的判断を取り入れていく。

・私の介護の体験では、親族が元気なうちは何の問題もなかったが、心身が少し弱ってきた時に、うまくアドバイスを聞いてもらえなかった。1)いつまでも家で生活したい、2)外部の介護サービスは入れない、3)親族の関りは避けたい、という閉じこもり型に入って、状況が悪化した。

・何とか介護付き施設に入ってもらい、健康は取り戻したが、そこまでは大騒ぎであった。その後、特養(特別養護老人ホーム)に入る目途も立ったので、サービスに加えて、経済的にも安心できるようになった。国の介護システムは実にありがたい。このシステムを使いこなしていくには、かなりのノウハウが必要で、専門の方々にいろいろお世話になった。

・一人ひとりの生活にどう介入していくか。これが国全体として、国民の健康を守り、快適な生活を過ごすには、的確なサービスが求められる。サービスの提供には、介入が不可欠である。一方で、プライバシーはきちんと守る必要がある。

・そうはいっても、信頼されなければ、ヘルスケアの質は向上しない。本人にとってのサービスの価値を上げて、国全体の価値も高め、ヘルスケアのコストを適正化するには、新しいヘルスケアのサービスモデル(価値向上モデル)が求められる。

・カギは、IT・DXによるインフラ構築にあろう。マイナンバーカードは必須である。医療情報・データの集積によって、個人ベースのサービスにも早めの見返りがあろう。軽度の段階からサービスのアドバイスを受け、その後もフォローしてもらえば、健康で元気に過ごせる期間が長くなる。

・わが国は高齢先進国で、ニーズは顕在化している。それに対するヘルスケアサービスも公的、民間のレベルで開発が進んでいる。それでも、広義の患者の増加には対応しきれていない。患者も自助努力や適切なサポートがあれば、事態が悪化することは避けられよう。こうした仕組み革新がバリューベース・ヘルスケアで進められる。

・ヘルスケアのバリューチェーンに関わっている企業は多い。真にバリューベースのビジネスモデルを作り上げ、それを実践している企業に大いに注目したい。

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