手掛かりが得られなかった米FOMC議事録

2013/08/23

今週の国内株式市場は、FOMC議事録(7月開催分)の公表を控えていたことで、米テーパリング(Tapering=量的金融緩和の縮小)をめぐる思惑に左右されすい地合いとなっており、とりわけ、資金引き揚げと景気鈍化が懸念される新興国株市場の軟調な動きに引きずられる格好で、日経平均も13,500円を下回る水準まで下落しています。

22日(木曜日)は予想外に強かった中国8月製造業PMIの結果を受けて日経平均が持ち直す場面がありつつも、戻りは限定的でした。先週後半からの下げ幅は600円を超えており、売り込まれている印象ではありますが、日経平均とTOPIXの予想ベースのPERは21日時点でそれぞれ14.92倍と15.51倍です。米NYダウ(13倍台)など海外指標と比べると、値頃感はあっても割安とはいえないため、このままの地合いでは下値を拾う動きはあっても、積極的に戻りを試す展開にはなりにくそうです。

当コラムでも何度か採り上げたように、米テーパリングの動向が相場の話題となってから大分経ちますが、状況はあまり進展していないと言えます。今回公表されたFOMC議事録を見ても、とりあえずテーパリングを実施する方向性自体はFRBメンバーでほぼ一致しているものの、実施の判断材料となる景気認識についてはメンバー間でバラツキがあり、「テーパリングをいつやるのか?」の手掛かりを見出すことができませんでした。引き続き、「早ければ9月にテーパリングが始まるかも」を念頭に、米8月雇用統計などの経済指標や次回のFOMC(9月17日~18日)を待つことになります。

以前はテーパリングの開始によって、「米国の金利が上昇し、日米の金利差によって円安が進み、日本株にも恩恵」という見方があり、実際にテーパリングの実施観測で国内株市場が上昇する時期も見られましたが、最近ではテーパリング観測が強まっても、為替が思った以上に円安方向に振れず、むしろ、「資金引き揚げによる新興国の情勢悪化」と「米金利の急ピッチな上昇による米国経済への悪影響」が警戒され、テーパリングの動向は徐々にリスク要因として捉えられるようになっています。

ただ、テーパリングの開始による、新興国や米国経済への影響度合いは、テーパリングの規模とペース次第です。縮小規模が警戒されるほど大きくなければ、足元で軟調な新興国株市場は「売られ過ぎ」と判断され、持ち直すことも想定されますが、今回の議事録からはそのヒントも与えられませんでした。バーナンキFRB議長は来年の1月末で任期満了ですが、その後任人事が注目されているのも、金融緩和に親和的とされるイエレン副議長と、金融緩和に厳しいとされるサマーズ氏のどちらが新議長になるかで、今後のテーパリングの方針が大きく変わる可能性があり、市場の視点は、「何時テーパリングを始めるか?」から、「テーパリングの規模とペースの行方」に移りつつあるためと考えられます。

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