法人景気予測調査

2013/03/15

足元の日経平均は、先週末(8日)に節目の1万2,000円台を回復、今週に入ってからも上値が重たいものの、高値圏を維持しています。とはいえ、円安進行や日銀の金融緩和観測、アベノミクスへの期待、米国を中心とする世界景気への楽観など、次々と好材料を先取りして上昇してきたため、一部では過熱感や買い上がる材料の不足感が意識されつつあります。また、企業業績の上振れ期待も先取りしてきた材料の一つです。

例えば、先週末のTOPIX終値は1020.50ポイント、PERは21.32倍(13年3月期予想ベース)でした。PERは「株価÷EPS(一株あたり利益)」で求められますが、ここからTOPIXのEPSを求めると、47.87円(1020.50ポイント÷21.32倍)です。さらに、来期(14年3月期)のEPSが50%増益ならば71.80円、60%ならば76.59円、70%ならば81.37円となり、来期の増益を織り込んだPERを計算し直すと、それぞれ、14.21倍、13.32倍、12.54倍になります。

同じ先週末の海外市場のPERが米NYダウ(12.8倍)、独DAX(11.8倍)、香港ハンセン(11.2倍)、タイSET(14.4倍)でしたから、ある程度の業績上振れは既に織り込まれているほか、割安感も薄れてきていると考えられます。

また、今週の12日に1-3月期の法人企業景気予測調査の結果が公表されました。これは、法人企業(資本金1,000万円以上)を対象に、景況感や売上高、設備投資などの項目について調査しているもので、四半期毎に財務省と内閣府が共同で実施しています。

今回の調査結果ですが、企業の景況感を表すBSI(景況判断指数)が大企業全体で1.0%ポイントと前回のマイナス(-5.5%ポイント)からプラスに転じ、2期ぶりに改善しました。先行きの見通しも4-6月期が3.8%ポイント、7-9月期も9.0%ポイントと改善幅が拡大しており、アベノミクスや外部環境による円安・株高の影響で企業マインドが前向きになりつつあります。

ただし、中堅企業や中小企業のBSIは依然としてマイナスであるほか、全体でプラスだった大企業も製造業に限ってみると、2期連続のマイナスでした(-4.6%ポイント)。自動車や機械などの景況感は改善した一方で化学や食料品などが悪化し、円安の恩恵を受ける業種と、輸入コストの上昇の影響を受ける業種とで明暗が分かれた格好です。また、設備投資計画についても前年比でマイナス6.5%と、まだまだ慎重な面も窺えます。

そのため、企業活動が本格的に改善していくのはこれからと言え、株式市場がある程度の企業業績回復を織り込んでいることを踏まえると、現時点で企業業績だけを材料に買い上がっていくのは少し難しいと思われます。今後は、4月あたまに公表予定の日銀短観や、その後の決算発表での業績見通しなどを見極めていくことになりそうです。

目先のさらなる株価上昇には、期待先行に現実がキャッチアップしていく動きや、新たな期待材料が出てくるなど、「もう一声」が欲しいところです。

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