株式市場の織り込み材料の整理

2012/10/11

「先週末からの国内3連休」に加え、「国慶節明けの中国市場」、「アフター米雇用統計」となった今週の国内株式市場ですが、軟調な展開が目立っています。きっかけとなったのは、世界経済の見通しに対する警戒が強まったことです。

10月9日~14日の間、世界銀行とIMF(国際通貨基金)の年次総会が東京をメイン舞台に開催されていますが、それに先立ち、IMFが「WEO(World Economic Outlook)」という、世界経済の見通しを公表し、今年(2012年)と来年の世界経済の成長率を下方修正しました。4月に発表された見通しから2度目の下方修正となります。

具体的には、世界経済の成長率見通しが今回の下方修正によって、2012年は+3.5%から+3.3%に、2013年も+3.9%から+3.6%となりました。また、IMFは今後の世界経済の行方の鍵となるものとして、欧州の債務問題と米国の「財政の崖」問題の回避を最重要課題として挙げ、状況によっては一層の減速も指摘しています。

株式市場は、9月に決定した一連の金融緩和の余韻が一服していることもあり、実体経済の先行き警戒の方が意識されて売りが優勢となりました。さらに、これから本格化する日米企業の決算発表での業績下振れ警戒、今週末にはオプションSQが控えていることなどの条件が重なり、より敏感に反応して下げ幅が大きくなった格好です。

確かに、現在の株式市場は世界経済の減速や企業業績の下振れを織り込みに行っているのは間違いないですが、水曜日(10日)の日経平均の動きを見ると、8,625円水準を挟んだ推移が長く続きました(結局、この日は8,600円台を下回って終了しましたが)。この水準は、オプション取引の権利行使価格8,750円と8,500円の中間地点です。週末のSQに向け、状況次第でどちらに転ぶこともできます。実際に、翌木曜日は欧米株安を受けて8,500円を試す動きを見せています。

つまり、直近の株式市場動きは経済や業績への不安に反応しても、それがどの程度になるのかが現時点で絞りきれていないため、理屈で説明がつく株価水準が定まりにくく、とりあえず、テクニカル分析が指し示す節目や、オプション取引の権利行使価格に伴う思惑などが、目先の株価の目処になっているという状況だと思われます。

例えば、企業業績の下振れをどこまで織り込んでいるのかは、これから発表される企業業績で見極めるところですし、特に一部の国内輸出関連企業については、冷え切った日中関係による業績への影響がいつまで続くのかも見えていません。相場の材料として反応しても、株価に織り込みきれたかは別の問題です。もちろん、現在の株価は過度に悲観している可能性もあり、そうなれば、一気に株価の戻りが想定されます。とはいえ、日中の政治動向に左右される部分も大きく、不透明な要素が多いです。

また、IMFが指摘している欧州や米国の問題についても同様です。現在、欧州で注目を集めているのは、スペインの財政支援要請とギリシャの支援継続協議の動向です。また、米国の財政の崖問題も、11月6日に実施される大統領選挙の結果次第ではシナリオが大きく変わってきます。いずれも政治動向がポイントとなります。

相場の材料は、織り込める材料が「リスク」、織り込めない材料が「不確実性」と切り分けて整理されますが、最大のポイントとなっている政治動向はどちらかと言うと、材料として織り込みにくい不確実性に近いです。そのため、今後の相場展開は企業業績の動向をにらみながら株価の落ち着きどころを探り、政治イベントが通過するまでは大きな方向感が出にくい展開となる可能性が高くなりそうです。

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