日銀は金融政策の枠組みを修正

2018/08/02

▣ 強力な金融緩和継続のために枠組みを強化

日銀は7月31日、金融政策決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強化する措置“強力な金融緩和継続のための枠組みの強化”を決めました。あわせて公表した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で、日銀は物価見通しを引き下げる(図表1)など、2%の物価目標達成が見通せない中、副作用などに配慮しながら、持続可能な金融緩和の枠組みに修正した格好です。

今回の措置の表題(“強力な金融緩和継続のための枠組みの強化”)で強力な金融緩和を継続する姿勢を強調するとともに、金融政策の将来の指針であるフォワードガイダンスを導入し、現在の長短金利の水準を維持する方針を示しました。また、国債買入れ額についても、“80兆円めど”を堅持し、金融緩和姿勢が後退していないことを示すとともに、国債市場の機能低下に配慮して、長期金利のある程度の変動は容認するよう柔軟な運用に微調整しました。ETFおよびJ-REITの買入れについても、買入れを弾力的に実施するとともに、TOPIX連動型のETFを拡大、日経平均連動型を縮小することで、買入れの持続性や株式市場の価格形成などに配慮しました。さらにマイナス金利が適用される政策金利残高を現在の水準から減少させて、マイナス金利による金融機関の負担にも配慮しました。長期金利の上昇を容認したことで、金融仲介機能にもわずかながら寄与することが見込まれます。

▣ 今回の措置

“強力な金融緩和継続のための枠組みの強化”の主な内容は以下のとおりです。

  • 政策金利のフォワードガイダンスを導入 ― 当分の間、現在の超低金利を維持

2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定。

  • 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強化 ― 長期金利のある程度の変動を容認、弾力的な買入れを実施

10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する

(短期金利はこれまでどおり、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用。)

  • ETFおよびJ-REITの買入れも弾力的な運用

ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする

  • 政策金利残高の見直し ― マイナス金利が適用される政策金利残高を現在の水準から減少
  • ETFの銘柄別の買入れ額の見直し ― TOPIXに連動するETFの割合を拡大

TOPIX連動型を2.7兆円から4.2兆円に拡大、3指数(TOPIX、日経225、JPX 日経400)連動型を3兆円から1.5兆円に縮小。

▣ 長期金利は上昇余地を探る

黒田日銀総裁は記者会見で、「長短金利の幅が上下に変動し得ることについては、国債市場の機能度を高めるためにある程度の変動を容認するということであり、従来±0.1%くらいの狭い幅で動いていたが、その倍くらいの幅を念頭に置いて考えていく」と述べました。長期金利について0.2%までの上昇が容認された格好ですが、2017年以降の長期金利は0.15%(7月末までの引け値ベースでは0.11%)まで上昇したことがあり、驚くほどの水準ではありません。因みに、2017年以降の20年債利回りの最高は0.730%(同0.715%)、30年債利回りは0.925%(同0.920%)、40年債利回りは1.110%(同1.095%)。

今回の金融政策の枠組みが当面続くこと、長期金利の上限が0.2%程度に限定されていることから、利上げの蓋然性が高まらない限り、超長期債利回りがこれらの水準を大きく超えるようなイールドカーブ(利回り曲線)のベア・スティープ化(利回り上昇・急こう配化)は考えにくそうです。

しばらくは、日銀の買入れオペのオファー金額の増減や指し値オペの実施水準などから、長期金利(10年債利回り)、超長期債利回りの上昇余地を探ることになりそうです。また、株価などの急落局面では、これまで以上に日銀が買い支えに動くかなど、ETFやJリートの弾力的な買入れについても確認していくことになります。

▣ 為替やJリートへの影響

市場では、「今回の修正は、長期金利の上昇を容認したことから「出口」(金融政策の正常化)への一歩」という見方と、「金融緩和を持続させるために枠組みを微修正しただけで、緩和姿勢は変わらない」との見方に分かれます。ただ、強力な金融緩和を当面続けていかざるを得ない状況は変わりません。

日銀の金融政策の下での、金利の方向性としては上昇、為替の方向性は長期金利の上昇を容認したことから円高とは言えそうですが、長期金利は変動の範囲内での動きに限定されます。長期金利については切り上がったレンジの中で居所を探る、為替については長期金利の上昇分は円高圧力が掛かりそうですが、緩やかな利上げを継続する米金融政策や米政権の通商政策などに左右されるとみられます。

なお、金利上昇の影響を受けやすいJリートですが、長期金利の上限が0.2%と限定的であるのに対し、4%を若干超えるJリートの予想分配金利回りは依然として相対的に高い水準です。因みに2013年4月の異次元緩和導入から2016年1月のマイナス金利導入前までの予想分配金利回りの平均は3.52%、長期金利と予想分配金利回りとのかい離の平均は3.00%、マイナス金利導入以降の予想分配金利回りの平均は3.81%、長期金利とのかい離は3.80%。直近の8月2日時点の予想分配金利回り4.086%に対し、仮に長期金利が0.2%まで上昇したとしても、長期金利と予想分配金利回りとのかい離は3.886%と過去平均と比べても高い水準で、利回り面での割安感は残ります。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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