米国株の急落は健全なスピード調整か─市場は冷静、円高進まず

2018/02/06

 

週明け日経平均も大幅安ですが、『巡航速度』に戻ったことで息の長い上昇相場となりそうです。

世界的な株価急落は米国発

先週金曜日(2月2日)に続き月曜日(5日)も、NYダウは急落しました。下落幅はそれぞれ前日比▲660ドル超(▲2.5%)、▲1170ドル超(▲4.6%)となる大幅下落でした。きっかけは、米雇用統計(1月)です。これまで前年比2%台半ばで落ち着いていた賃金が、市場予想を上回る2.9%増となったためでした。これにより米国長期金利は一時2.9%近くまで急上昇しました。昨年末、トランプ減税法案が成立したことで、米国長期金利はすでに(1年前のトランプ・ラリーの急上昇後に止まった)2.6%をあっさり上抜けています。こうした景気過熱やインフレ加速への警戒感で長期金利が急上昇し、NYダウ急落の引き金となったようです。

週明けの東京市場でも日経平均が、5日(月)は前週末比592円安となり、翌6日(火)も大幅安で寄り付いています。ちなみに、5日の日経平均の下落率(2.5%)はNYダウ並みでした。グローバル株式ポートフォリオに占める米国株や日本株等の構成割合を一定に保とうとする内外の機関投資家が、米国株の急落を受け日本株等も機械的に売ったと推測されます。

市場は冷静、円高も進まず

もっとも、市場は冷静なようです。なぜなら景気に敏感な銅や鉄鉱石など商品市況が落ち着いているため、最近の世界同時株高の牽引役となっている「世界的な景気拡大」という相場テーマが賞味期限切れになってしまった訳ではないからです。「値動きだけに反応するシステム取引で売りが売りを呼んでいるだけ」とみられ、アクティブ運用の市場参加者は、押し目買いの機会をうかがっている模様です。

外為市場でも、市場の不安心理が高まるとリスク回避的な円高が進みがちですが、今回は1ドル=109~110円付近で動意薄です。通商交渉に関連する米中当局者発言を主因に約4円の円高が進んだ1月中のような、ドルを売り崩す動きはみられません。そもそも今回のように米国長期金利が上昇すれば、日米金利差の拡大観測が意識されるので、さすがの短期筋もドル売り崩しは困難なようです。

急落で巡航速度に戻った日米の株価

市場の冷静さには、根拠がありそうです。チャートを確認しますと、NYダウは2016年秋の大統領選を受けたトランプ・ラリーを始点とする右肩上がりの上昇トレンドに沿って上昇してきています(図表1参照) 。ところが2018年初の1月5日以降は、一斉に米国株が買い進まれ、当該上昇トレンドの上値抵抗線を大きく上抜けしていました。昨年末のトランプ減税法案の成立を受けた動きです。市場では、上昇トレンドを上回るペースでの株価上昇により『スピード出し過ぎ感』への警戒が高まっていたところでした。

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急落によりNYダウは、当該上値抵抗線を下回る株価水準まで戻ってきました。『巡航速度』に戻ってきた形です。今回の急落は、むしろ健全なスピード調整と言えそうです。

日経平均についても概ね同様です(図表2参照)。米国株が落ち着きを取り戻せば、「世界的な景気拡大」という相場テーマは生きているので、「押し目は買い」との強気相場に戻りやすいかも知れません。

いずれにせよ、今回の大幅な急落で日米とも株価は『巡航速度』に戻った形となりました。世界的な景気拡大──とりわけトランプ減税による米国景気の過熱で、米国株高が日本など他国にも波及する構図が続き、息の長い上昇相場となりそうです。

明治安田アセットマネジメント株式会社
明治安田アセット/ストラテジストの眼   明治安田アセットマネジメント株式会社
かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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