中国の外貨準備高について

2015/10/09

今週の国内株市場ですが、日経平均は18,000円台を回復しての展開が続いています。やや上値の重たさは感じられるものの、概ね堅調と言えます。先週末の米雇用統計という注目イベントを通過した米株市場が上昇したことや、週末に流れた「TPP交渉が大筋合意」との報道などが好感されました。先週は日銀の追加緩和への思惑が一部で盛り上がったことで株価が反発していましたが、週を跨いで比較的スムーズに戻り基調のバトンタッチが行われた格好です。

そして、10月7日~8日にかけて開かれた金融政策決定会合で日銀が下した判断は「現状維持」でした。お昼ちょうどに発表されたこの結果を受けて、一時的に円高と株安が進む場面がありましたが、大方の予想は追加緩和見送りでしたので、その後は持ち直しました。確かに、米FOMC(10月27日~28日)の先手を打つにはタイミング的に早過ぎですし、そして追加緩和を株価対策として考えるならば、来月4日に郵政3事業のIPOが控えているため、「FOMC後、IPO前」である10月30日の会合で追加緩和が決定される可能性はありそうです。

一方、海外情勢にも目を向けると、日銀会合の結果発表と同じ日の10月8日に、中国で外貨準備高が公表されました。夏場に中国への不安が高まったのは記憶に新しいですが、不安の高まりによって中国からの資金流出が懸念されるようになりました。その中国の外貨準備高は9月末時点で3兆5,140億ドルでした。前月から433億ドル減少しましたが、前々月が過去最大の939億ドルの減少だったことに比べると、そのペース自体は鈍化しています。ただ、未だに中国当局は人民元レートの安定のために介入を継続していると思われ、外貨準備の減少傾向はしばらく続きそうです。

夏場以降の中国情勢への警戒は、これまでの中国への楽観的な見方に対して修正を迫っています。具体的には「中国の経済成長は続くだろう」、「それに伴い人民元も強くなるだろう」、「いざとなったら当局が何とかしてくれるだろう」という前提が危うくなっているということです。楽観的な見方が支配的だった頃は、景気減速の兆候が現れたとしても、経済構造が「新常態(ニューノーマル)」という安定成長への移行期にあるわけだから一時的な景気減速は仕方がないと受け止められ、中国に向かう投資資金が衰えることはあまりありませんでしたが、今後はそれが逆回転していくのではという見方に変わるかもしれないということです。

中国の外貨準備高のピークは2014年6月の3兆9,900億ドルで、ほぼ4兆ドルです。もちろん世界1位で、当時の2位である日本(1兆2,839億ドル)と比べても圧倒的なことが分かります。確かに足元ではピークから12%ほど減少しているものの、それでも巨額であることに変わりはないです。ただ、今さらながら「中国のGDPは信用できるのか?」という、そもそも論が浮上しているのと同様に、「中国の外貨準備高はあまり安心材料にならないではないか?」という見方が浮上しています。

外貨準備高とは、国全体(政府と民間)が保有する対外純資産のうち、政府当局(中央銀行等)の保有分になります。ですので、通常の場合、外貨準備高は対外純資産の一部になります(対外純資産>外貨準備高)。ただし、中国の場合、2014年末の対外純資産が1兆7,800億ドルですので、対外純資産よりも外貨準備高の方が大きいことになります。中国の外貨準備高の急増は、これまで強引な人民元売り・米ドル買いによる為替介入(人民元高を阻止)を続けてきたことと考えられます。つまり、外貨準備高が対外純資産よりも多い分は、国外からの借金によって外貨を保有しているという意味になり、外貨準備高の規模は国の信用を与えるよりも、いざ中国の金回り(資金繰り)が悪くなった場合、悪影響を与えるものになるかもしれない可能性があります。

外貨準備高が発表された翌8日(木)から、国慶節による長いお休みだった中国上海株市場の取引が久々に再開されました。上海総合指数の連休明け始まり値は3,156ポイントと3%を超える上昇でスタートしましたが、表に出ていない中国への懸念は燻り続けていることは意識した方が良いかもしれません。

 

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楽天証券経済研究所 土信田 雅之が、マクロの視点で国内外の市況を解説。着目すべきチャートの動きや経済イベントなど、さまざまな観点からマーケットを分析いたします。
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