5月18日妥当レンジ 23,400円~25,300円
リスク要因に振り回される展開続くが押し目は積極的に

2018/05/22

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米中貿易摩擦は保留となったが、北朝鮮状勢が不透明化>

■19日に米中両国は通商協議を受け、中国が農産物やエネルギー資源など輸入拡大に同意したことを共同声明として発表した。また、20日にムニューシン米財務長官は「貿易戦争を保留し、関税措置についても保留とすることで合意した」とインタビューで答えている。これを受け、21日のNY株式市場では25,000ドルを回復した。
■日本株も国内経済指標が奮わないことや、企業業績見通しがやや期待外れではあったが、円安を受けて緩やかな上昇が続いている。米長期金利はFRBの年4回の利上げを織り込むかのように3%を超えて推移しており、円の先安感が強まっていることが背景にある。
■しかし、21日にペンス米副大統領が北朝鮮の出方次第では米朝首脳会談を取りやめる用意があるとの認識を示したことから22日は利食い売りに押されるかっこうとなっている。
■リスク要因としては、北朝鮮、イランへの制裁強化、エルサレム問題が引き続き挙げられる。マーケットは、リスク要因と株価の割安感との綱引きの中で推移する展開がまだまだ続きそうである。今週は、米韓首脳会談(ワシントン・22日)が注目されそうである。

 

<IFIS/TIWコンセンサス225:全期間で前週比プラス>

■5月18日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全ての期間で前週比プラスとなった。しかし、来期から再来期への増益率は+2.5%と依然として低い状態にある。 「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業数の比率)は、来期ベース59.3%、再来期ベース61.5%と高水準であるが、対象決算期の移行の影響が強く、次週以降の動向を注視する必要があるだろう。
■前回からTIWの妥当レンジの算出は、来期(再来期予想ベース)の妥当レンジを(期待リターンで)1年割り戻す方法を採用しているが、いずれにしても現株価水準には割安感が強い。リスク要因によって上値に対してはまだ抑制的に推移すると思われるものの、リスクが後退する局面では急上昇する可能性もあるので押し目は積極的に拾ってゆきたいと考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

23,400円~25,300 (前回22,900円~24,800円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月18日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月18日)

今期予想EPS 1364.06 (前週 1362.13円)
来期予想EPS 1565.37 (前週 1555.35円)
再来期予想EPS 1605.04 (前週 1587.67円)
今期予想PER 16.81 (前週 16.71倍)
来期予想PER 14.65 (前週 14.63倍)
再来期予想PER 14.29 (前週 14.33倍)
来期予想PBR 1.21 (前週 1.19倍)
来期予想ROE 8.24% 前週 8.12%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.76% (前週 7.69%)

5月18日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1
ソフトバンクグループ(
9984)の影響を強く受け、コンセンサス予想EPSは来期は大幅増、再来期は伸び悩むという状態。

 


図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 46.068.544.969.554.6
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.3%→62.251.7%→63.059.3
今回(5/18)までは対象決算期の移行の影響より高水準であるが、来週以降に50%超を確保できるかに注目!

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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