株価の暴落が更なる暴落を招くメカニズムに注意

2020/03/05

■バブル崩壊の端緒となる場合あり
■借金で株を買っている人の「泣きたい売り」
■「損切りルール」による「泣きたい売り」
■初心者の狼狽売り
■買い注文が減る場合も
■投機家が先回りして売る
■初心者の狼狽売りが相場の底かも
■今回は判断が難しい

(本文)
■バブル崩壊の端緒となる場合あり
人々が「今の株価は高すぎるが、明日は今日より更に値上がりするだろうから、今日買って明日売ろう」と考えている状況は、古典的なバブルである。そんな時に株価が暴落したら、人々が一斉に売り注文を出し、株価が大暴落してバブルが崩壊するかも知れない。

もっとも、昨今では「誰が見てもバブルだ」という古典的なバブルは政府日銀等が早めに潰すので、大きくなる事は滅多にないだろう。

今回も、バブルだったとは考えにくい。せいぜい「米国株は若干割高かも」と恐る恐る買っていた人たちが一斉に逃げ出した、といった程度であろう。

■借金で株を買っている人の「泣きたい売り」
株価が暴落すると、借金で株を買っていた人の所に銀行から返済要請が来る。銀行としては、不安だから返済を求めるのは当然の事だろう。

投資家の中には、「これ以上値下がりしたら破産してしまうから、損切りしよう」と考える人もいるだろうが、「今が絶好の買いのチャンスだ。もっと借金をして株を買い増そう」と考える人も多いはずだ。そんな人は、銀行から返済を要求されると、泣く泣く売り注文を出す事になるわけだ。

個人投資家が信用取引を行なっている場合には「追加証拠金」を要求され、それが払えないと泣く泣く株式を売却する事になるが、それと似たような事がプロにも起きているのである。

相場観からの売り注文は、「本当に売った方が良いだろうか」と迷いながら出て来るが、「泣きたい売り」は迷いが無いので、一気に出て来て大きく相場を崩す事にもなりかねない。

■「損切りルール」による「泣きたい売り」
機関投資家は、「担当者は、一定以上の損を出した場合には、持っている株を全部売って休暇を取って頭を冷やせ」という社内ルールを設定している事が多いようだ。

損失が無限に拡大するリスクを回避しよう、という目的と並んで、「損が膨らんだ担当者は頭に血が上って冷静な判断が出来なくなるから」という理由もあるようだ。

そうなると、「株価が下がったから買い増しをして損を一気に取り返そう」と考えている担当者が売りを強要されて「泣きたい売り」を出さざるを得なくなるわけだ。

■初心者の狼狽売り
投資の初心者は、株価が時として不可解な動きをするという事に慣れていないので、株価が暴落したりすると、この世の終わりが来そうな気がして狼狽売りをしてしまう事もあるだろう。

最初の暴落時に値ごろ感から買いを入れ、その後の更なる暴落で損が膨らんで耐えきれなくなって投げ売りする、といった話もよくあるようだ。

短期売買の投資家が狼狽売りをするのは理解できるが、積立投資をしている投資家の中にも積立を止めたり解約したりする人が多いようだ。これは勿体ないことだ。

積立投資というのは、「初心者は自分の相場観で売り買いすると間違えるから、敢えて相場観を封印して毎月一定額を買う」というものであるから、相場観で止めたり解約したりしてはいけないのである。

■買い注文が減る場合も
株価が下がって来ると、上記のような売りが出て来ることから、「相場観からは買いたい水準だが、更に値下がりするだろうから、少し待ってから買おう」と考える買い手が出て来る。

「値段が下がると売り注文が減って買い注文が増える」ならば良いのだが、「値段が下がると売り注文が増えて買い注文が減って」しまいかねないのだ。

■投機家が先回りして売る
上記のようなメカニズムで株価の暴落が更なる暴落をもたらす事を知っている投機家は、最初に株価が暴落した時に売っておき、株価が底値に近づいた時に買い戻す、という事を試みるかも知れない。

そうなると、暴落の第二弾は投機家の売りによるものだ、という事にもなりかねない。

■初心者の狼狽売りが相場の底かも
初心者が狼狽売りをすると、なぜか相場が底を打ち、スルスルと反転してゆく事が少なくないと言われている。

それは、初心者が売る頃までには売るべきプロは売り終わっているからだ。そして、投機家が売ってある分を買い戻し始め、買いのタイミングを見計らっていた上記の買い手も買い始めるからだ。

■今回は判断が難しい
というわけで、株価が暴落しても初心者は狼狽売りをせず、どっしり構えていれば良い、というのが一般論だ。

もっとも、今次局面ではそうも言っていられない。新型肺炎が本格的に流行するような事があれば、株価は本格的に大暴落するかも知れないからだ。

「今次暴落で株価が適正水準より低い所まで下がったから、今買っておけば長期的には儲かるだろう」と考えるのか、「今まで高すぎた分が剥げ落ちただけなので、未だ割安とは言えないから、何もしない」のか、「今後も下がり続けると嫌だから売っておく」のか、判断の難しい所だろう。

まあ、株の短期売買の本質は賭け事であるから、大いに賭け事を楽しめば良いだろう。当然ながら、大事な老後資金をつぎ込むのではなく、小遣いの範囲で。

それから繰り返すが、積立投資を行っている初心者は、積立を止めたり解約したりせず、淡々と積立を続けることだ。それが積立投資というものなのだから。

(3月2日発行レポートから転載)

TIW客員エコノミスト
塚崎公義『経済を見るポイント』   TIW客員エコノミスト
目先の指標データに振り回されずに、冷静に経済事象を見てゆきましょう。経済指標・各種統計を見るポイントから、将来の可能性を考えてゆきます。
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