参院選と株価の答え合わせ
- マーケットの反応は買い戻し半分、今後の政局への期待半分
- 期待が持てるシナリオは新総裁のもとでの自民党と国民民主党との連立
マーケットの反応は買い戻し半分、今後の政局への期待半分
2024年10月に「『衆院選と株価』の答え合わせ」というレポートを書いた。今回はその参院選版である。
7月7日付で「今夏の参院選と株式市場」というレポートを出した。そこでは以下のように述べた。
- これまでは「選挙は買い」が相場の定石だった。与党勝利=日本の政治の安定=政策実行の確実性維持というのが株買いにつながってきた。
- 今回の参院選では、どう考えても与党の勝利は見えないが与党が敗北したら、株価は下落するのだろうか。必ずしもそうはならないと思う。
- 今回は負けても株高になるのではないか。
参院選の結果は周知の通り。その結果を受けてマーケットは円高・株高で反応した。与党大敗で衆院・参院ともに少数与党となったわけだが、事前には懸念する声もあったものの、「日本売り」は起きなかった。
その理由として、メディアなどでは「与党は負けたが、予想したほどの大敗ではなかったから」とか「石破首相続投の表明で安心感」で買戻されたとの解説がなされている。
まったく違うと思う。まず、どこをどう見ても歴史的大敗である。買戻しというのも、一部にはあるが、今日の高値は4万円を超えている。そこまで買い上がるのは決して「買戻し」とは言わないだろう。そしていちばんクエスチョンマークがつくのが石破首相続投を評価したという点だ。
僕は真逆の見方をしている。前掲のレポートでは「今回は負けても株高」と見る根拠として以下のように述べていた。
- いずれにせよ大幅議席減はほぼ間違いないのだから、多かれ少なかれ石破さんの責任問題になるだろう。その場合、市場はポジティブに反応するのではないか。
- つまり石破政権は何もやってこなかった(に等しい)政権なので、そんな政権なら退陣してくれたほうがいい、よって株価は上がるというシナリオだ。さらに石破政権退陣後にもっといいリーダーが出てくるかもしれないっていう期待が高まれば、上昇基調が強まるかもしれない。
石破さんは続投の意向を表明したというが、それで持つか?自民党が、そして日本の政治が、である。
衆院・参院ともに少数与党となって首相続投は、どう考えても無理筋だ。でもそうなることもレポートで予想済みである。
- しかし、上述のシナリオ(石破首相退陣―新しいリーダーの誕生)の実現性については、ちょっと難しいだろうなというのが正直なところだ。なぜかと言うと、今これだけ難しい局面で石破さんの後を継ぐっていうのは まさに火中の栗を拾うようなものだからだ。だからまっとうな後継者が出てこない恐れがある。
- よってぎりぎり過半数維持か、仮に過半数割れでも、結局、後任がいないために石破政権がダラダラ続いてしまう - それは最悪のシナリオだと思うが - それがメインシナリオではないか。
今回の参院選直後のマーケットの反応は、ざっくり言って買戻しが半分、もう半分は今後の政局への期待だろう。買戻しとなった理由は、ここまでの展開が、「ほぼ予想通り」「ノー・サプライズ」だったからだ。そして残りの半分の「今後の政局への期待」というのは、早晩、石破さんが退陣するという期待だ。あるいは野党を巻き込んでの連立の枠組みの再構築だろう。今回の参院選の結果が示唆するものは、有権者が旧体制にNoを突き付けたということだ。それが有権者からのメッセージだ。変わらざるを得ないだろう。
それでは野党の要求を丸呑みして消費税減税などに走り、財政悪化懸念から金利が上昇するシナリオか?それなら株価も持たない。日本売りのトリプル安になる。
そうはならないだろう。今回の結果は与党の大敗だが、野党もすべてが躍進したわけではないのだ。伸びたのは国民民主党と参政党だけで、あとは見るところがない。ただでさえ野党の要求もバラバラで絞り切れていないので、現実問題としての消費税減税にはたどり着かないだろう。
期待が持てるシナリオは新総裁のもとでの自民党と国民民主党との連立
結局、あり得るシナリオとしては自民党が新しい総裁を選び、その新しい総裁のもとでの自民党と国民民主党との連立だろう。それなら経済も回る期待が出てくる。
玉木代表はこう語っている。「短期的な物価高騰対策ではなくて、日本の成長戦略や強い経済をどう取り戻すのかといったことについて、我々がしっかりアプローチし、また現役世代の皆さん、若い人たちに対して、ある意味ターゲティングをしっかりして訴えたことが、一定の成果につながっている。」
短期的な物価高騰対策ではなくて、日本の成長戦略や強い経済をどう取り戻すのか ― まさに重要な点であり、それについては確かに他の党に比べて一歩踏み込んでいた感があった。それが有権者に刺さったのだろう。有権者はしっかり見ている。そして、その目線は、まさに株式市場のそれと重なる。これが今回の参院選の結果を受けて、まずは株高で市場が反応した背景である。
その後、日経平均は下げに転じているがそれも限定的だ。参院選の反応はすでに消化し、次の日米通商交渉の行方に相場のテーマが移行したからだと思う。
いずれにせよ、今後の政権の枠組みが非常に重要になってくる。

また保証するものではございません。
・記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、
勧誘するものではございません。
・過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
・提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。
・当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。
・投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
・本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに
転用・複製・配布することはできません。
・内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。
マネックス証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第165号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 日本暗号資産等取引業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会