次期FRB議長候補の顔ぶれ

2017/07/13

市川レポート(No.417)次期FRB議長候補の顔ぶれ

  • コーンNEC委員長は有力候補との報道も、市場では政策手腕やFRBの独立性を懸念する声も。
  • 低金利環境に批判的なハバード氏らは、緩和解除が進む現状では、市場に受け入れられやすい。
  • イエレン議長再任なら市場は最も好感、今後、後任人事は議会やトランプ大統領の言動に注目。

 

コーンNEC委員長は有力候補との報道も、市場では政策手腕やFRBの独立性を懸念する声も

米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は2018年2月に任期満了を迎えます。時期的に、市場では、後任人事への関心が高まりつつあります。今から4年前、当時、バーナンキ議長の後任候補として早くから名前があがったのは、サマーズ元米財務長官でした。しかしながら、2013年7月頃から民主党議会にイエレン副議長を推す動きが強まり、オバマ米大統領は2013年10月9日にイエレン副議長を次期議長に指名しました(図表1)。

今回は、次期議長と目される有力候補の顔ぶれを確認します(図表2)。まずは、米国家経済会議(NEC)委員長のゲーリー・コーン氏です。米政治専門サイトのポリティコは7月11日、議長指名のプロセスに関係する4人の話として、コーン氏が最有力候補と報じています。コーン氏はウォール街出身ですが、FRBでの勤務経験や、エコノミストの経験はありません。エコノミスト非経験者がFRB議長になれば、約40年ぶりのことになります。

 

低金利環境に批判的なハバード氏らは、緩和解除が進む現状では、市場に受け入れられやすい

市場では、コーン氏の金融政策手腕が未知数であることに対する懸念や、トランプ米大統領の側近であるコーン氏が、政策判断に政府の意向を反映すれば、FRBの独立性が損なわれるとの指摘もみられます。これに対し、学者やFRB出身で、次期議長として有力視されているのは、米コロンビア大学経営大学院学長のグレン・ハバード氏、米スタンフォード大学教授のジョン・テーラー氏、元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏です。

この3名はいずれも、2017年1月6日から8日の間、米イリノイ州シカゴで開催された米国経済学会(AEA)の年次総会に参加しており、そこでのパネル討論会で、FRBの金融政策に関する見解を明らかにしています。3名とも、低金利環境の長期化に批判的という点で共通しており、政策スタンスは明確です。そのため、いずれが議長に指名されても、すでにFRBが緩和の解除を進めている現状、市場には受け入れられやすいと思われます。

 

イエレン議長再任なら市場は最も好感、今後、後任人事は議会やトランプ大統領の言動に注目

このほか、イエレン議長の再任を期待する市場参加者も多くみられます。再任の場合は、現行の政策方針が維持されることになるため、市場は最も好感すると思われます。トランプ米大統領は春先、イエレン議長について「尊敬している」と述べ、再任に含みを持たせています。ただ前述のポリティコ報道での関係者4人は、イエレン議長再任の可能性は低下していると話しています。

今後、イエレン議長の後任人事については、共和党議会やトランプ米大統領自身の言動が注目されます。現時点における有力候補のなかでは、ゲーリー・コーン氏が指名された場合、市場の反応がやや懸念されます。それ以外の、グレン・ハバード氏ら3名のいずれかが指名された場合、あるいはイエレン議長が再任された場合、市場は比較的落ち着いた動きになると思われます。

 

170713図表1170713図表2

 

(2017年7月13日)

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