日銀の政策決定と日本株、円相場への影響

2016/01/29

市川レポート(No.204)日銀の政策決定と日本株、円相場への影響

  • 日銀の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入を受け、日本株とドル円は乱高下の展開。
  • 日銀当座預金を3分割した1つにマイナス金利を適用、金融機関に対する狙いは貸出の増加。
  • 政策効果の見極めは必要だが、外部環境もやや落ち着き、相場の潮目の変化が期待される。

日銀の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入を受け、日本株とドル円は乱高下の展開

日銀は1月28日、29日の金融政策決定会合において、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定しました。黒田総裁は1月21日の参院決算委員会において、日銀としては現時点でマイナス金利を具体的に考えているということはないと述べていたため、今回の決定は市場にサプライズを持って受けとめられました。政策発表後、日経平均株価は17,638.93円まで上昇、ドル円も121円42銭付近まで上昇しました。

その後はいったん利益を確定する動きが優勢となり、日本株もドル円も大幅反落しましたが、すぐに買い戻しが入るなど、方向感なく乱高下する相場展開となりました。なお同時に公表された展望レポートでは、2016年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)が前年度比+1.4%から同+0.8%に下方修正され、また物価目標の達成時期も、2016年度後半頃から2017年度前半頃に先送りされました(図表1)。

日銀当座預金を3分割した1つにマイナス金利を適用、金融機関に対する狙いは貸出の増加

同じく展望レポートでは、原油安や中国リスクなどで金融市場が不安定になっていることが指摘され、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大しているとの認識が示されました。これが今回の政策決定の直接的な理由と思われます。日銀は「質」・「量」・「金利」の3つの次元で緩和手段を駆使し、金融緩和を進めていくことを表明しました。ただ今回は「質」と「量」は据え置きとなっています。

マイナス金利の導入は賛成5、反対4の僅差で可決されました。具体的な運用スキームは、日銀当座預金を①基礎残高、②マクロ加算残高、③政策金利残高に分割し、それぞれ+0.1%、ゼロ%、-0.1%の金利を適用することになります(図表2)。金融機関がマイナス金利を回避しようとする場合、現金保有を増やせば②や①が減額される、貸出を増やさざるを得ないことになり、これが日銀の真の狙いだと思われます。

政策効果の見極めは必要だが、外部環境もやや落ち着き、相場の潮目の変化が期待される

相場への影響を考えた場合、日銀がマイナス金利に踏み込んだという点で、海外投資家などから評価が得られる可能性があります。また日銀は必要に応じてマイナス金利のさらなる引き下げを示唆し、緩和の打ち止め感を払拭しました。そして日銀の決定を受け、日本国債の利回りが全期間で大きく低下しました。この動きは円安要因として材料視されやすく、為替相場が極端に円高に振れるリスクは後退したと思われます。

また外部要因に目を向けると、人民元安の対米ドル基準値は連日落ち着いており、人民元安への過度な懸念は和らいでいます。また原油価格も産油国の減産合意の思惑から、徐々に下値を切り上げる動きが見られるなど、これまでの外部のリスク要因に変化の兆しがみられます。もちろんまだ予断を許さない状況で、かつマイナス金利の効果も見極める必要があることから、慎重さは求められるものの、日本株や円相場の潮目が少しずつ変わることも期待できるのではないかと思われます。

160129 図表1 160129 図表2

 (2016年1月29日)

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