中国の動向は相場の「追い風」か「逆風」か?

2022/07/15

今週の国内株市場ですが、日経平均は週初に節目の27,000円台を回復する場面があったものの、そこから先の上値が伸ばせない「モヤモヤ」感が目立つ印象となっています。注目の米6月CPI(消費者物価指数)や、本格化しつつある企業決算の動向待ちということもあり、これまでのところ26,000円台での推移が中心となっています。

このうち、日本時間13日(水)の夜に公表された米6月CPIが40年半ぶりの高水準(前年比で9.1%上昇)と、インフレが加速する結果となりました。最近の相場については、ここ何回かのコラムでも紹介したように、インフレの動向やそれに伴う国内外の金融政策への思惑、そして景気への影響という「三つ巴」の構図でムードが揺れ動く状況が続いています。株価の本格的な上昇が続いていくためには、(1)インフレが早期に落ち着きそう、(2)景気が「後退」ではなく「減速」で済みそう、(3)企業業績の落ち込みも限定的になりそうなどの面で自信を深めていくことが必要になるのですが、今回の米CPIを受けた米株市場は下落という初期反応を見せ、先週までの株価の戻り基調に水を差す格好となりました。

さらに、今回のCPIによって、「金融政策の引き締めが強まる」、「インフレが収束する前に景気の減速・後退が進む」という警戒感が再び強まっている印象があり、次に焦点となるのは企業決算になります。株式市場では、依然として10年債利回りの低下によってグロース株が買われる局面があるものの、企業業績の悪化見通しが強まると、こうした支えが揺らぎ、株価の下げ幅が大きくなってしまう可能性があります。

また、意外と注意が必要なのは中国の動向かもしれません。中国では、上海のロックダウンが解除される少し前の5月末のタイミングで、経済安定のための包括的政策措置を発表しました。交通や水利などのインフラプロジェクトを推進するほか、税還付の大幅拡大や地方債発行のスピードアップ、企業に対する債務・社会保障費の支払い猶予など、幅広い対象分野に及ぶ経済政策パッケージで、その規模はかつてのリーマン・ショック直後に打ち出された「4兆元の経済政策」を上回っています。

そのため、今後の中国経済に対しては、「新型コロナの状況さえ悪化しなければ、4-6月期が最悪期でその後は急回復していく」という見方が優勢のようです。ただ、昨年の中国恒大集団をはじめとする不動産業界の債務問題の影響は、不動産開発の遅延・停滞による他業界への影響をはじめ、地方政府の財政悪化や「ゼロコロナ政策」との悪循環など、根深いものがあり、果たして今の中国が経済政策の効果を発揮できる環境にあるかは微妙なところかもしれません。つい先日も、一部の金融機関で現金が引き出すことができなくなり、抗議活動が行われたという出来事も発生しており、「カネ周り」が悪化しつつある可能性があります。

そのため、秋の共産党大会なども含め、年末にかけての中国は相場のリスク要因として注目される場面が増えそうなことは意識しておいた方が良いかもしれません。

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