「再開発」事業で揺れるベイルート争奪戦
中国、ドイツ、ロシア、フランスがベイルート港の再建を競い合っている(参考)。
昨年(2020年)8月にベイルートの港湾施設で起きた化学物質の爆発は200名以上の死者を出した。そして8か月が経った今、ベイルートの港を再建するために外国企業が競い合っているのだという。
(図表:2020年ベイルート湾爆発)
(出典:Wikipedia)
爆発以来、政治的な混乱が続いており、政府のあらゆる問題について意思決定が困難に。損傷したドックや倉庫の再建に加え、港湾の拡張やデジタル化にかかる費用は4億ドルから6億ドルと見積もられている。
中でも特にドイツとフランスが復興の主導権を競っている(参考)。
今年(2021年)4月、ドイツの代表団は大使立ち会いのもと300億ドルを投じてベイルートの港とその周辺地域を再建する壮大なプロジェクトを発表した。ハンブルグ・ポート・コンサルティング社(Hamburg Port Consulting)をはじめとする企業が策定した計画は港を東に移し、周辺地域には社会住宅や「セントラル・パーク」、さらにはビーチを設けることを目指している(参考)。
かつての植民地宗主国であるフランスもこの港の再建に向けて準備を進めている。
爆発直後の昨年(2020年)9月、マクロン仏大統領が2度目のベイルート訪問を行った際、フランスを本拠とする世界有数の海運大手CMA-CGMのレバノン出身のトップ、ロドルフ・サーデ氏が代表団に名を連ねていた。その際、同社はレバノン政府に対し、海辺の場所を再建、拡張、近代化して「スマートポート」にする3段階のプロジェクトを提示。現在3年以内にベイルートの港を再建するという積極的な計画を進めている(参考)。
(図表:都市再開発の一例)
(出典:Wikipedia)
海外における都市開発/インフラ再開発事業として日本企業がベイルートの再開発をする可能性はあるのだろうか。
レバノンの近隣地域に進出している日本企業として株式会社安藤・間(TYO:1719)や清水建設株式会社(FYO:1803)、大成建設株式会社(FYO:1801)などがある(参考)。
レバノンはシリアと並んで「レバント」(Levant)の筆頭格である。レバントとは東部地中海沿岸地方の歴史的な名称で主にシリア、レバノン、ヨルダン、イスラエル(およびパレスチナ自治区)を含む地域(歴史的シリア)を指すことが多い。
この「レバント」は歴史的にも重要な位置づけを与えられてきた経緯があり、現在「秩序」改変の焦点となっている。
中東における既存構造の解体と再構築に向けた動きが進んでいる中、欧米を中心とする諸国勢の同地域における争奪戦が激化する可能性に引き続き注視して参りたい。
グローバル・インテリジェンス・ユニット Senior Analyst
二宮美樹 記す
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