「五輪お祭りムードとリスクテイク」相場後の展開

2013/09/12

2020年、東京五輪決定の高揚感の中で迎えた今週の国内株市場は大幅上昇スタートとなりました。不動産や建設セクターを中心に、スポーツ用品や広告、警備会社、鉄道など、いわゆる五輪関連とされる銘柄に物色が向かいました。11日(水曜日)には、日経平均が取引時間中に7月25日以来となる14,500円台を回復し、先月末(13,388円)から8営業日で1,000円超上昇したことになります。

この株価急騰の背景には、五輪のお祭りムードだけではなく、短期間で上昇するだけの材料が相次ぎ、リスク回避姿勢からリスクテイク姿勢になったことも挙げられます。具体的には、発表された経済指標が軒並み市場予想を上回り、景況感の改善につながった中国、GDP改定値や法人企業景気予測調査の良好な結果を受けて、国内の消費増税観測が強まったことへの評価、米国のシリアに対する武力介入の可能性がひとまず後退したことなどです。

さすがに過熱感も意識されやすく、12日(木曜日)は売りが先行する展開となりましたが、現在の地合いに大きな変化がなければ、まずは米FOMCでテーパリング(量的金融緩和策の縮小)動向を見極めたあと、企業業績の上方修正期待や消費増税による景気下押し圧力をカバーする政策の議論、安倍首相自らが「成長戦略実行国会」と銘打ち、10月召集の国会に向けた成長戦略の中身などを順調に織り込んで行くと思われ、日経平均は14,000円台半ばで値固めをしつつ、15,000円台をねらう動きをメインシナリオとして想定しています。

また、五輪関連銘柄ブーム自体は長くは続かず、銘柄選別が進んでいくことになりますが、五輪の東京開催決定自体は引き続き「追い風」材料になると考えられます。安倍政権が掲げる最大の目標は、デフレ脱却と財政再建ですが、これらは「このまま放置しておくとマズイ」状況に対処するという、どちらかというと「後ろ向き」の目標です。これに、「世紀のスポーツイベントを是非とも成功させよう」という「前向き」の目標が加わることとなり、心理的な側面からみてもその意義は大きいといえます。

ただし、米国の動向、とりわけシリア情勢には引き続き注意が必要と思われます。現時点では、「シリアが保有する化学兵器を国際管理下に置く」というロシアの提案を米国とシリアが前向きに受け入れる姿勢を示したことで、武力介入という展開はひとまず回避されている格好です。ただ、その段取りが決まったわけではなく、関係国間の交渉がしばらく続くことになります。思ったよりも交渉が長期化するような事態となれば、再び武力介入が意識されはじめ可能性があるほか、米議会で本腰を入れて討議しなければならないはずの米国債務上限引き上げ問題にも影響が出てくる恐れがあります。

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