ブロードマインド<7343> 20歳代~40 歳代のファミリー層を主対象に展開できる仕組みに注目

2021/04/01

一般世帯に包括的に金融サービスを提供するフィナンシャルパートナー
20歳代~40 歳代のファミリー層を主対象に展開できる仕組みに注目

業種: 保険業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 20 歳代~40 歳代のファミリー層を主対象にワンストップで 金融サービスを提供
ブロードマインド(以下、同社)は、中間所得層のファミリー向けに金融コン サルティングサービスを提供している。ソニー生命出身の代表取締役社長 が、顧客の幅広い需要に対応するため、複数の生命保険会社の商品を扱 える乗合代理店として設立した。その後、保険だけに限らず、金融商品、住 宅ローン、不動産仲介も扱うようになり、包括的に金融関連のサービスを提 供できるような体制を構築した。

富裕層向けには、大手金融機関のウェルスマネジメント部門やプライベート バンクのように、金融関連のサービスを包括的に提供する事業者は存在し ている。しかし、その人件費の高さから、ある一定以上の資産を保有する層 を対象にしないと収支が合わず、中間所得層を顧客対象とはしていない。

そのため、中間所得層のファミリー向けには、保険なら保険だけといったよう に、金融業態ごとに各社が個別に金融商品を提供しているのが実情であっ た。中間所得層のファミリー向けに包括的に金融関連サービスを提供できる 会社は同社くらいしかなく、それを可能にする仕組みを構築していることが、 同社最大の競争力の源泉となっている。

同社の事業セグメントは、フィナンシャルパートナー事業の単一セグメントだ が、同社の売上高は、提供する商品・サービス別に6つの事業に分類される (図表 1)。20/3 期の全体の売上高の約 8 割が生命保険代理業によるものと なっている。また、売上高の相手先の上位 2 社は生命保険会社であり、2 社 合計で全体の売上高の過半を占めている(図表 2)。

◆ 仕組み(1)~ 見込み客の獲得
同社は他社との業務提携により見込み客を獲得する体制を構築している。 業務提携先は、クレジットカード会社、婚活サービスを行うタメニー(6181 東 証マザーズ)のようなライフイベントに関するサービスを提供する事業会社、 フィンテック企業等、個人向けに事業を行う企業となっている。提携先の顧 客に対するテレマーケティングやアポイント取得済みのデータ購入、マネー セミナーによる集客等を通じて、同社のコンサルタントによる対面営業の機 会獲得につなげていく。20/3 期の新規相談受付件数のうち、約 8 割が提携 先からの紹介によるものとなっている。

これらの結果、顧客世帯数は順調に増加してきており、20/3 期には新規に 6,308 世帯の顧客を獲得し、期末の顧客世帯数は 61,423 世帯となった(図 表 3)。

◆ 仕組み(2)~コンサルティング
同社のコンサルティングは、ライフプランニングに基づいて行われる。これは、 顕在化している需要に対して適切な提案を行うためだけでなく、将来にわた る潜在需要の掘り起こしのために必要となる。それでも生命保険が入口の 顧客が多く、同社の 20/3 期の売上高の 78.7%が生命保険の販売によるもの である(図表 1)。

◆ 仕組み(3)~アフターフォロー
将来にわたって継続する生命保険契約が中心であるため、継続的に顧客 にコンタクトする機会が生じる。同社は、アフターフォローとして、ライフプラ ンニングを通じて把握した顧客のライフステージに応じて、コンサルタントが 生命保険以外の金融サービスの提案も行っていく。このアフターフォローを 続けていくことで、複数の金融サービスのクロスセルにつなげ、収益機会を 広げていくことになる。

◆ 収益構造
同社の収益は、生命保険をはじめとした金融商品・サービスの取引によって 発生する手数料収入が中心である(図表 4)。

生命保険を例にとると、生命保険の契約が成立すると、生命保険会社から 販売手数料を得る。契約成立時に初年度手数料及びボーナス手数料(フロ ー型収益)が得られるほか、契約後 4~10 年にわたって継続手数料(ストッ ク型収益)が得られる。

こうしたストック型収益は、生命保険だけでなく、損害保険、投資信託でも得 られる。ストック型収益が存在することで、同社の収益の安定性が確保され ている。

手数料収入はほぼそのまま売上総利益となる。唯一、不動産販売について は仕入原価が発生するため、不動産の売却額と仕入原価の差が売上総利 益となる。なお、不動産については、連結子会社である Broad-minded America Properties, Inc.及び Broad-minded Texas, LLC の 2 社が米国不動 産を、20 年 10 月に設立した連結子会社 MIRAI が日本国内の不動産を取 り扱っている。

◆ コンサルタントの育成
コンサルティングとアフターフォローを行うのは同社のコンサルタントであり、 このコンサルタントの稼働の度合いが収益を決定すると言っても過言ではな い。同社は、コンサルタントは見込み客開拓を行わず、コンサルティング業 務に注力できる体制を構築している。

その体制を支える仕組みとして、営業成績によって給与が増減する業績連 動給は採らず、固定給の給与体系としている。また、採用は新卒を中心に 行い、独自の教育システムによって、コンサルタントの質のばらつきを少なく しつつ、入社後 3 年弱で累計黒字化できるとしている。同時に、コンサルタ ントの定着率を上げる効果ももたらしている。実際、同社の新卒入社 3 年以 内の退職率は、他の金融業態の企業平均に比べて相当低く抑えられてい る。

◆ IT を活用したコンサルタントの業務効率化と提案力向上
コンサルタントの稼働効率を上げつつ、提案力を向上していくために、同社 は IT を積極的に活用している。金融商品のような顧客への説明を必要とす る商談に適したオンライン商談システム「Broadtalk(ブロードトーク)」や、ライ フプランニング機能と複数の金融商品の同時設計機能をウェブ上で利用で きる「マネパス」を開発、利用している。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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