ジーネクスト<4179> 特に食品業界において多くの実績とノウハウを有する

2021/03/31

顧客対応業務を一元管理するデジタルプラットフォームの開発・提供を行う
特に食品業界において多くの実績とノウハウを有する

業種: 情報・通信業
アナリスト: 阪東 広太郎

◆ 顧客対応 DX プラットフォーム事業を展開
ジーネクスト(以下、同社)グループは、顧客対応を DX 注 1 化するプラットフ ォーム「Discoveriez」を開発し、様々な規模・業界の顧客に提供している。同 社グループは、「顧客対応DXプラットフォーム事業」の単一セグメントである が、売上高は「クラウド事業」と「オンプレ事業」、「その他」の 3 つのサービス に区分される。21/3期第3四半期累計期間における売上構成比は、クラウド 事業 75.5%、オンプレ事業 18.7%、その他 5.8%である(図表 1)。

なお、同社グループは、顧客対応業務を、コンタクトセンターやお客様相談
窓口など企業と顧客を繋ぐ窓口に寄せられる、問い合わせやクレームなど
に対応する業務としている。顧客と実際に対面する場合もあるが、基本的に
は電話やメール、チャットで対応するものを同社グループでは想定してい
る。

◆ 顧客対応 DX プラットフォーム「Discoveriez」
「Discoveriez」は、コールセンターやメール、チャットといった様々な窓口に 顧客から寄せられた問い合わせやクレームの内容を一元化し、社内の各部 署・社外のステークホルダーとの情報共有、業務フローに基づく対応の承認 や記録、リスクマネジメント、品質管理・新商品開発に活用できるソフトウェア である。

同社グループによると、消費者を顧客とする多くの企業では、顧客からの問 い合わせやクレームの受付の窓口が、コールセンターやメール、チャットな ど複数あり、別々のシステムで管理されているケースが多い。そのため、顧 客情報を横断的に検索できず、顧客対応の質・スピードが低下する、インシ デントの発見が遅れる、業務改善に繋げにくいといった課題に直面している。 「Discoveriez」は上記のような課題に対して、顧客からの問い合わせ情報を 一元化し、検索や共有を可能にし、リスクを早期に察知し、関係者にアラー トを出し素早くアクションに繋げたり、窓口横断での顧客ニーズの分析など を可能にしている。

同社グループは、03 年 4 月に、お客様相談室に特化した業務サポートシス テム「CRMotion」の提供を開始した。その後、音声認識サービス「BizVoice」 や顧客管理サービス「BizCRM」といった、顧客相談業務に関連したサービ スを拡充してきた。19 年 11 月に、これらのサービスを統合して顧客対応 DX プラットフォーム「Discoveriez」へとリニューアルした。

(1) クラウド事業
クラウド事業では、従来のオンプレミス型顧客対応窓口向けサービスで培っ たノウハウをクラウド型サービスにした「Discoveriez」を提供している。これま での実績から得た知見を活かした業界ごとのテンプレートを用意しているた め、顧客は導入決定から 3 カ月程度で運用を開始できる。

同社グループの収益は、顧客から受け取る導入料とライセンス利用料で構 成されている。導入料は顧客が「Discoveriez」を導入する際に必要となる業 務フロー改善などに関するコンサルティング料や既存システムからのデータ 移管料、顧客の基幹システムとの連携に関連する開発費用で構成される。 ライセンス利用料は、基本利用料とオプション利用料で構成される。基本利 用料は導入 ID 数で決まり、1ID 当りの利用料は 1.5 万円/月である。オプシ ョン利用料は特定のオプション機能の利用量に応じた従量課金制である。

(2) オンプレ事業
オンプレ事業では、BCP 対策や情報資産管理の観点から自社サーバーで の顧客対応窓口システムの構築・運用を求める顧客向けに、「Discoveriez」 をオンプレミス型で提供している。各ユーザー企業の業務フローに合わせた システムをカスタマイズで構築している。

同社グループは、システム導入時に顧客から導入料を受け取り、導入後は システム稼働期間にわたってメンテナンス・保守費用を受け取っている。導 入料およびメンテナンス・保守費用は、顧客ごとに相対で決めている。

◆ その他の事業
その他の事業として、同社グループは一定期間において最低限の仕事量 を保障するラボ型開発、コンサルティング業務等を行っている。同社グルー プは、「Discoveriez」に経営資源を集中するため、20/3 期にラボ型開発から の撤退を決定した。現在、同社グループは新規案件の受注は受けておらず、 過去に受託した案件のみを手掛けている。コンサルティング業務としては、 「next 相談室」という名称で、同社グループが蓄積している顧客対応に関す る知見を活かして、顧客対応に関する戦略・運営方法を提案している。

◆ 顧客構成
「Discoveriez」の累積導入件数は、20 年 12 月末時点で 87 件である。顧客 企業の業種は食品メーカーが約 4 割、日用品メーカーが約 2 割、外食が約 1 割となっている。消費者が日々消費しており、製品の安全性などにセンシ ティブな業界で導入が進んでいるようである。顧客の売上規模は約 9 割が 100 億円以上であり、大企業が大半を占めている。

同社グループの売上高は顧客分散が進みつつある。21/3 期第 3 四半期累 計期間において、売上高の 10%を超える顧客は存在しない(図表 2)。19/3 期および 20/3 期に売上高の 10%以上を占めたポーターズ(東京都港区)と 19/3 期に売上高の 12.7%を占めたパイプドビッツ(東京都港区)は、その他 の事業のラボ型開発によるものである。

◆ 顧客の獲得経路
「Discoveriez」の顧客獲得経路は、顧客からの問い合わせが大半を占め、 一部がシステムインテグレーターからの問い合わせである。既存のオンプレ ミス型の顧客相談窓口システムの入れ替えを検討する際に、同社グループに問い合わせを行う顧客が多い。

同社グループは、消費者関連専門家会議や外食相談研究会、日本菓子 BB協会といった食品業界や外食業界におけるお客様相談窓口に関連した 業界団体に加盟している。業界団体内で、同社グループの評判が口コミで 広がり、問合せに繋がっているようである。

21/3 期第 3 四半期累計期間より、既存システムのオンプレミスからクラウドへ の移行に加えて、DX を目的とした問い合わせが拡大しているようである。

顧客が同社グループに問い合わせをしてから、システム導入の意思決定をす るまでの期間は、顧客毎によって異なるが、半年程度のようである。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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