オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Growth)
OBP-601:600百万ドル超のM&Aとなる可能性も

2023/12/04

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

有望なPhase2aの中間結果
OBP-601は、PSP(進行性核上性麻痺)、ALS(筋萎縮性側索硬化症)/FTD(前頭側頭型認知症)及びAGS(アイカルディ・ゴーティエ症候群)といった神経変性疾患を対象に導出先のトランスポゾン社でPhase2aが遂行されている。11月15日には、PSPに関する24週の中間解析データのサマリーが公表された。今回の公表では、OBP-601がPSP患者の脳脊髄液中のNfL(ニューロフィラメント軽鎖)の低下が確認された。神経細胞が炎症により損傷することでNfL値が上昇するので、NfL値の低下は素晴らしい結果である。バイオジェン社は、臨床機能の改善に基づいた有効性評価項目を達成できなかったが、NfL値の低下に基づいてALS薬の迅速承認(2023年)を得た例からも、NfL値の低下は大きな意義を持つ。また、OBP-601は、脳脊髄液中で神経炎症のバイオマーカーとなるIL-6も低下させた。2023年末前後には、ALS/FTDの中間解析データを取得予定である。

アルツハイマー病への適応拡大も視野に
OBP-601によるNfL値の低下は、アルツハイマー病など他のタウオパチー(タウタンパク質の異常リン酸化による神経原線維変化がみられる疾患群)への適応拡大の可能性を示唆している。現在トランスポゾン社で遂行しているPhase2aはいずれも希少疾患が対象であるが、アルツハイマー病の患者は全世界で55百万人程度(2019年)と推計され、治療薬の売り上げ規模も大きく、高い成長率が見込まれている疾患領域である。

OBP-601がもたらす収入
今後、PSPのみならず、ALS/FTDやAGS、そしてアルツハイマー病など他のタウオパチーへの効果が浮上した場合、トランスポゾン社が大手製薬会社のM&Aの対象となることも考えられる。M&Aの対象となった場合の買収金額を予想することはできないが、最近の神経分野でのM&A事例やこれまでの開発費用を考慮すると、最低でも200百万ドル以上、場合によっては600百万ドル超の金額も想定される。仮にM&Aが成立した場合、M&Aで得た金額の一定の割合が、オンコリスバイオファーマ社に分与され、さらに大手製薬会社の下での開発・販売となっても、トランスポゾン社とのマイルストーンやロイヤリティ等に関する契約は引き継がれ、M&A後も、オンコリスバイオファーマ社にマイルストーン収入やロイヤリティ収入がもたらされる。テロメライシン(OBP-301)の申請に向けた開発で資金需要が旺盛であるが、早めにM&Aが実現し、まとまった金額をオンコリスバイオファーマ社が取得できれば、OBP-601の価値の早期実現を通した企業価値評価が進むだけでなく、オンコリスバイオファーマ社の開発パイプラインの拡充による企業価値の拡大も期待できる。

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