株式投資でインフレに備えよう

2016/09/26
(要旨)
・インフレのリスクは、人々が考えているより高そうである。
・景気回復が続けば、労働力不足による賃金上昇でインフレになるであろう。
・ 中期的には、少子高齢化による労働力不足でインフレになるであろう。
・大地震により超インフレになる可能性も、資産運用に際しては考慮したい。
・株式はインフレに強い資産の一つである。
・分散投資の一つとして、株式投資を活用すべきである。

 

(本文)
・景気回復が続けばインフレに
アベノミクスにより、景気は回復したものの、インフレ率がなかなか高まって来ない。原油価格下落の影響などを除いても、日銀の目標である2%には遠く及んでいない。
当初、インフレの経路として想定されていたのは、「金融緩和によって世の中に資金が出回り、資金と現物の比率が変化してインフレになる」というものであったが、世の中に資金が出回らなかった(銀行貸出が増えず、マネーストックが増えなかった)ことから、この経路は実現しなかった。
一方で、景気回復により労働力が不足するようになり、労働力需給を素直に反映して非正規の賃金が上がり始めている。今後も労働力不足が続けば、賃金が上昇を続け、サービス業を中心に物価が上昇するようになるだろう。これは、比較的タイムラグが長いプロセスなので、そして今次景気回復が非常に緩やかなので、時間を要しているが、文字通り時間の問題であろう。

 

・少子高齢化でインフレに
少し長い目で見ると、少子高齢化により、労働力不足が深刻化して行くであろう。そうなれば、景気が良くても悪くても人手が足りず、賃金が上昇していくかも知れない。あるいは、現役世代が介護に忙しくて製造業に就業できず、物不足に陥るかも知れない。そうなれば、恒常的なインフレ圧力がかかり続けることになる。
日銀がインフレを抑制するであろうが、2%が目標なのだから、日銀のコントロールが完璧であれば10年で物価が20%上昇する。預金金利にもよるが、銀行預金は相当大幅に目減りすると考えておくべきであろう。

 

・イベント・リスクにも要注意
経済予測ではなく、リスクという観点からは、資産運用面でも大地震に備えるべきであろう。巨大地震と津波で東京、大阪、名古屋が壊滅的な被害を受けたら、供給力激減と復興需要のダブルパンチで超インフレになるであろう。可能性が高いとは言えないが、期待値(発生確率と、発生した場合のインフレ率の積)は意外と高いのではなかろうか。10年以内の発生確率が10%とし、その際のインフレ率を100%とすると、期待値は10%である。
これも決して無視できるレベルではない。現金や銀行預金はリスク資産なのである。

・株式はインフレに強い資産
株式は、企業の一部を所有するものである。インフレになれば、企業の所有する資産が値上がりするから、企業の価値も値上がりし、株式の価値も値上がりする。
一度借りた借金はインフレになっても増えないということを考えると、インフレ率以上に純資産が増加するかもしれない。そうなれば、PBRが一定で推移するとすれば、株価も上がる筈である。
インフレになれば、企業の利益も増える。売上げと費用が2倍になれば、利益も2倍になるはずである。減価償却や利払い(設備投資資金を長期固定金利で借りている場合など)はインフレでも増加しないので、利益はインフレ率以上に増えるかもしれない。そうなれば、PERが一定で推移するとすれば、株価も上がるはずである。
短期的には、インフレ時に金融引締めが行なわれて株価が下落するリスクもあるが、長期投資ということならば、インフレが収まって金融引締めが解除された後の株価はインフレ前の株価より高いと考えて良いであろう。

 

・海外の株もインフレ対策に持っておきたい
外貨も、インフレに強い資産である。為替レートが一定で推移し、日本がインフレになれば、海外製品が割安になり、輸入が増える。そうなれば、輸入代金支払いのための外貨買い注文が増え、外貨が値上がりする。
外貨は、MMFなどで保有しても良いが、外国株で保有する選択肢も検討したい。外国がインフレになって外貨安になってしまうリスクに対し、外国株が当該国通貨建てで値上がりすれば、円建てで見た資産価値は目減りしないからである。

 

・分散投資が重要
株も外貨も、インフレ以外の要因で大きく値が動く場合も多いので、資産に占める一銘柄の比率が高すぎるのはリスクである。「すべての卵を一つの籠に入れてはいけない」という格言に従って、様々な資産に分散して投資したい。
その際、たとえば輸出株ばかり保有していては、何銘柄持っていても円高で損をする可能性があるので、バラバラな値動きをするものに分散したい。
投資対象のみならず、時間的にも分散投資を心がけたい。「退職金で大量の株を買ったが、後から振り返ったらその時が株価のピークだった」という事が無いように、時間をかけて少しずつ買って行くことが望ましい。
なお、サラリーマンは、資産に占める株式や外貨の比率を決める際、将来は退職金が受け取れるのだ、という事を考慮したい。退職金は、本来ならば毎月の給料で受け取るべき金を、会社に「定期預金(満期は退職日)」しているものなので、これも金融資産に含めて考えるべきだからである。
(TIW経済レポート 9月5日より転載)
久留米大学教授 TIW客員エコノミスト
塚崎公義『経済を見るポイント』   久留米大学教授 TIW客員エコノミスト
目先の指標データに振り回されずに、冷静に経済事象を見てゆきましょう。経済指標・各種統計を見るポイントから、将来の可能性を考えてゆきます。
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