欧州株、金利上昇を嫌う投資資金の受け皿に━米長期金利上昇で

2018/05/18

 

米国では株高加速を抑える長期金利の急上昇も、当面、考えにくく、欧州株高が続きそうです。

米国株価の上昇加速を抑える長期金利の急上昇

市場が最も注目している相場テーマの一つは、現状、米国長期金利の急上昇です。米国株価の上昇加速を抑える要因となりはじめているからです。

米国株(NYダウ)は、2017年央から株高が加速していました。トランプ減税の景気拡大効果を期待し『トランプ株高トレンド』ともいうべき株高加速の流れとなっていましたが、それを抑えたのが、今年1月後半から2月にかけての長期金利の急上昇です。(一時的だったとは言え)米国株は急落し、世界的な株安連鎖にもつながりました。昨日(5月17日)にかけ長期金利は約7年ぶりの水準(3.1%)へ上昇しました。現状、米国株への強気な市場の見方が衰える兆候はみられませんが、株高加速という『トランプ株高トレンド』にはまだ復帰していません。

金利上昇は企業の割引現在価値(≒株価)の低下要因

長期金利の急上昇に対する株式市場の警戒感には、実は理論的な根拠があります。株価の理論値は、「企業が将来にわたって生み出す経済的価値の総額」(以下、将来にわたる企業価値)を、長期金利を使って現在の価値に換算することで求められる割引現在価値(を発行済み株式数で割った値)とされます。すなわち、株価={将来にわたる企業価値÷(1+長期金利)}÷発行済み株式数、となります。このため、たとえ(分子の)「将来にわたる企業価値」が不変だとしても、(分母の)長期金利が上昇してしまえば、その割引現在価値──すなわち株価は低くなる、とされるのです。

一方、もしも(分子の)「将来にわたる企業価値」の増加が期待されれば、株価は上昇します。世界的な景気拡大観測により企業業績拡大が期待される現状での株高は、その典型と言えるでしょう。

先行き、(分子の)「将来にわたる企業価値」の増加ペース見込みと、(分母の)長期金利の上昇ペース見込みとを比較し、どちらの要因が強そうか?──すなわち先行き株価上昇ペースはどうなるか? を見極めることが、魅力的な投資対象国の選定に役立ちそうです。

ユーロ圏も英国も長期金利の上昇はゆるやか

最近、米国株の上昇ペース鈍化とは対照的な、欧州株の比較的堅調な上昇傾向を指摘する声が市場で目立ちます。 「欧州株への資産配分引上げ」を推奨する米欧の投資銀行(セルサイド)も目立つようになりました。(分母の)長期金利の上昇ペースを警戒したとみられる投資資金が、米国株から一部、欧州株へ流入している模様です。

リーマンショック(2008年)の打撃からいち早く回復した米国と異なり、欧州は(ユーロ圏は欧州債務危機、英国はEU離脱国民投票等の打撃が加わり)回復は遅れましたが、もはや欧州景気は着実に拡大しつつあります。長期金利を低く押さえつけていた金融緩和の縮小が始まろうとしており(注)、欧州でも長期金利は向こう1~2年の間に上昇すると見込まれます。もっとも、すでに緩和縮小が進行する(冒頭のような)米国と比べ、当面、株価への影響はなさそうです。

(注)MYAM Market Report「ユーロ高、英国ポンド高か─ECB、BOE、日銀に政策スタンス差」(2018.4.26)参照。

欧州等の減速懸念は一時的、世界的景気拡大は不変

(分子の)「将来にわたる企業価値」の増加ペースについては、米国株も、欧州株も、当面、心配なさそうです。世界景気拡大ストーリーは不変と考えられるからです。

最近、『米国金利上昇が新興国等に打撃を与え、世界景気悪化や金融不安をもたらす』との声が一部で聞かれます。欧州でもドイツで1-3月期に輸出等が落ち込むなど、景気減速が一時、懸念されました。しかし、(鉄鉱石等を運搬する外航船運賃の目安である)バルチック海運指数をみますと、4月初をボトムに急回復しています(図表1参照)。

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世界の貿易量は、力強く持ち直しつつあるようです。トランプ米政権の「貿易戦争」懸念の和らぎが一因かも知れません。「2018年初に欧州景気はやや減速したが、一時的な要因によるもので、高い経済成長率はなお続く(remain strong)」(欧州委員会2018年春の経済見通し、5月3日公表)とのことです。欧州株高が続きそうです(図表2参照)。

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明治安田アセットマネジメント株式会社
明治安田アセット/ストラテジストの眼   明治安田アセットマネジメント株式会社
かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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