過去の米利上げ局面における為替と株価の動き(その3)
市川レポート(No.100) 過去の米利上げ局面における為替と株価の動き(その3)
- 04年の利上げ局面では日米の通貨政策がドル円相場に大きく影響。
- 同局面における日米株価は米連続利上げへの警戒から振れ幅の大きい展開に。
- 金融ショック、国際通貨合意、日米通貨政策、米連続利上げが過去の相場変動要因。
04年の利上げ局面では日米の通貨政策がドル円相場に大きく影響
引き続き、米国の利上げ局面における「政治情勢」や「経済環境」を振り返ります。直近4回の最初の利上げ実施日のうち、すでに①1987年9月4日、②1994年2月4日、③1999年6月30日については前回のレポートで当時の状況を検証しました。いずれの時期も、予期せぬ金融ショック(1987年10月19日のブラック・マンデー)や米国の通商政策(1994年当時)などが為替や株価の動きに極めて大きな影響を与えていたことが明らかになりました。今回は④2004年6月30日の利上げ決定時における時代背景を探って参ります。
④2004年の利上げ局面:為替市場では2003年後半から2004年初めにかけてドル安・円高が進行しました。きっかけは2003年9月20日のドバイG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の共同声明で「為替レートの更なる柔軟性が望ましい」という表現が用いられたことでした。当時の米国は経常収支の赤字が拡大していたため、市場では経常収支の不均衡を是正するために為替レートの調整(ドル安・円高)が容認されたとの見方が強まりました。これに対し日本の金融当局は、円を押し下げるために巨額のドル買い・円売り介入を実施し、2003年1月からの2004年3月までに介入総額は約35兆円に達しました(図表1)。
同局面における日米株価は米連続利上げへの警戒から振れ幅の大きい展開に
一方、米国経済に目を向けると、ITバブル崩壊後に強まったデフレ懸念が後退し、力強い内需を背景に景気は回復へ向かいました。米連邦準備制度理事会(FRB)は2004年6月30日に利上げを決定し、「慎重な(measured)ペース」での金融引き締めが開始されました。利上げは2006年6月29日までの約2年間に17回行われ、フェデラルファンド(FF)金利の引き上げ幅は累計4.25%に達しました。日本では2001年3月19日に導入された量的緩和が継続され、景気回復局面にありましたが、日本株は利上げへの警戒で神経質な動きを強めた米国株に連れ、振れ幅が拡大しました(図表2)。
金融ショック、国際通貨合意、日米通貨政策、米連続利上げが過去の相場変動要因
以上、米国の利上げ局面当時の時代背景を振り返ってみると、ドル円相場が米国の金融引き締めと日本の金融緩和で必ずしもドル高・円安にならなかったのは、「通貨の方向性に関する国際合意(①の局面)」や「米国の為替政策(②、④の局面)」が為替市場で材料視され、ドル円相場の方向性を主導したことによるものと思われます。また日米の株価がおおむね米国の利上げ前に上昇し、利上げ後に下落するという傾向にあったのは、「金融ショック(①の時期)」や「連続利上げ(②~④の時期)」が株式市場で材料視され、米国株の方向性を主導し、日本株がそれに連れた動きとなったためと推測されれます。そこで次回のレポートでは、米国の利上げが年内に予想されるなか、現時点における国際的な「政治情勢」や「経済環境」を過去と比較しながら整理し、為替と株価の動きを展望します。
(2015年6月25日)
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