米長期金利上昇、コロナ感染拡大がJリート市場の重し

2022/01/20 <>

▣ 米長期金利上昇を受け、投資家心理が悪化

米長期金利が大きく上昇していることを受け、投資家心理が悪化し、1月19日には株式市場とともにJリート市場も大きく売られ、東証REIT指数は1,900ポイントを割り込み、昨年3月以来の水準まで下落しました(図表1)。

昨年末には1.51%だった米長期金利は、米金融引締めの前倒し観測に加え、原油高を受けたインフレ懸念を背景に、今月18日には1.88%と2020年1月以来、2年ぶりの高さに、19日にも一時1.90%まで上昇しました。

▣ FRBの積極的な金融引締め姿勢を受け、市場は利上げ観測を上方修正

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長やブレイナード理事が、議会証言でインフレ抑制を強調するなど、FRBはインフレとの戦いに軸足を移しています。今年3月に利上げを開始する可能性が高くなっているだけでなく、0.25%の利上げではなく0.5%の大幅利上げを見込む声も出てきています。

これまで、米短期金融市場が織り込む将来の政策金利の水準は、昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の政策金利見通しを下回り、より緩やかな利上げを予想していました。ただ、FRB高官から金融引締めに積極的な発言が相次いだことを受け、緩やかな利上げという予想を大きく修正させられた格好です。

▣ 市場はすでに今年4回の利上げを織り込み

米金融市場は、すでに2022年の4回の利上げ、2023年の3回の利上げをほぼ織り込み、昨年12月のFOMC参加者の政策金利見通しを上回ってきていることから、もう一段の米金利上昇は限定的となる可能性があります(図表2)。

とはいえ、3月の0.5%の利上げ、また米国債などの保有資産の縮小開始時期をめぐる思わくなどから、米長期金利は不安定な動きが続くことも想定されます。

▣ 新型コロナの感染拡大も懸念材料

米長期金利の上昇のほか、国内で新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が急拡大していることも、Jリート市場の重しになっているとみられます(図表3、4)。

オミクロン株は従来株より感染力は強いものの、重症化リスクは低いとされていますが、感染急拡大を受け、政府は21日から東京、神奈川、愛知など13都県に「まん延防止等重点措置」を適用することを決定しました。経済活動再開やGoToトラベルなどへの期待が後退していることも、市場の下押し材料とみられます。

▣ 不安定な動きの中、押し目を探る展開か

国内の長期金利が上昇しているとはいえ0.1%台と低水準で推移する一方、Jリートの予想分配金利回りは3.84%(19日)と、2013年以降の平均値を上回り、利回り面からの妙味は増しています(図表5)。また、東京都心のオフィス空室率が昨年12月には2か月連続で改善したことも、下支え材料です。

新型コロナの感染については、日本に先んじて急拡大した米国で鈍化の動きが出てきています。経口薬への期待も支えです。また、予断は許さないものの、拡大も早いが収束も早い可能性はあります。ただ、緊急事態宣言が再び発令されることには注意が必要です。

しばらくは、米長期金利やコロナの動向をにらみながら、押し目を探ることになりそうです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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