生保の2021年度下期の運用計画
国内の大手生命保険会社の2021年度下期の運用計画が出そろいました(図表1)。以下、日経QUICK、ロイター、Bloombergなどの報道を基に、運用計画をまとめています。
引き続き、国内の超長期債については積み増し傾向が強いことに加え、30年債や40年債の利回り上昇を受け、投資妙味が出てきていることから、生保各社の超長期債への投資が国内債券のイールドカーブ(利回り曲線)の一段のスティープ化(利回り上昇、急こう配化)を抑制しそうです。
外国債券については、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の正常化を控え、米長期金利の上昇待ちの姿勢が強くなっています。
また、リスク分散と収益強化のため、オルタナティブ(代替)資産への投資、ESG(環境・社会・企業統治)を考慮した投資を積極化する姿勢が鮮明です。
今年度下期の運用方針について抜粋した各社の主なコメントは以下のとおりです。
◆ 国内債券 ~ 超長期債については押し目買い姿勢か、クレジット投資は継続 ~
- 30年物や40年物といった超長期の国債で利回りが0.6~0.7%が維持される限りは積み増しができる。
- 30年物など超長期国債への投資を増やし、利回りが上昇すれば買い入れを加速させる。
- 世界的な金利上昇局面で国内外の債券を積み増す。
- 新発30年物国債の利回りが0.7%を超えている(足元では0.7%弱)が、十分に魅力的とはいえない。
- 長期金利のゼロ%付近での動きが続いており、国債への投資妙味は引き続き薄い。
- 金利変動リスクを抑えるため、負債にあわせて年限の長い債券を積み増す。
- 金利情勢をにらみつつ社債を積み増し、短期資金を超長期国債に振り向ける。
- 事業債などクレジット資産の組み入れを進める。
- 下期も、国内外のクレジット投融資を増やす。
◆ 外国債券 ~ 為替ヘッジについてはまちまち、社債は積み上げの方向、米国債は米長期金利の上昇待ち ~
- 外国為替の変動リスクをヘッジ(回避)しない“オープン外債”の投資を積み増す方針。
- ヘッジなしのオープン外債については急ピッチな円安・ドル高は続かないとみて減らす方針。
- 米利上げ開始が23年中にずれ込むことで年度末にかけてやや円高が進むと予想し、為替リスクについては機動的に対応する。
- ヘッジ付き外債でも、高めの利回りを確保するために社債は積み増す。
- 欧米を中心とした外国ソブリン債、外国社債をヘッジ付きで増やす。
- ヘッジ付き外国社債については、米国のクレジット資産を中心に積み上げる。
- 社債は、対国債スプレッドが低水準で推移するとの見込みから、新規投資は引き続き抑制。
- 米長期金利が2.0%程度まで上昇するようだと投資妙味が出てくる。
- 米長期金利が上昇して投資妙味が高まる場合は残高の積み増しを検討。
- 米国の債券とアジアの債券を積み増す。
- 海外金利は上がってきているが、魅力的な水準ではない。
◆ 内外の株式 ~ 引き続き押し目狙い ~
- 国内株式は米国株に対し出遅れていた日本株の上昇を見込み、中期的に強気の姿勢で買い入れを進める。
- 国内株式については押し目とみたタイミングを中心に買い入れを増やす。
- エネルギー価格の高騰を背景に企業業績の改善ペースが想定より鈍る可能性があり、株式の積み増しには慎重に対応する。
- 国内外の株式への投資は、安定した配当が見込める株やリターン効率の向上に資する案件を見たうえで判断する。
- 国内外の株式については、調整局面で押し目買いも検討する。
- 株式相場はコロナ禍の収束後、企業業績の回復とともに上昇基調をたどると予想しており、国内外の株式投資については中長期的に割安とみた水準で購入していく。
- 国内株式の保有を減らし、リスク削減を進める方針だが、株価水準次第では残高を機動的に調整する。
- 米国でテーパリング(量的金融緩和の縮小)の開始が見込まれるなか、国内外の株式相場の下落リスクは限られる一方、上昇の勢いも限定的。
◆ その他、オルタナティブ等 ~ オルタナティブ投資を積極化、不動産投資も ~
- プライベート・エクイティ(PE=未公開株)やダイレクトレンディング(直接融資)など成長が見込める分野は下期も運用を増やす方針。
- ヘッジファンドへの投資を進めており、今後はPE、プライベートデット(企業等への貸付債権)への投資に力を入れる。
- ESG(環境・社会・企業統治)関連の投資についても積極的に積み増す。
- ESG投融資については、脱炭素の取り組みなどを後押しする。
- 運用利回り向上へPEなどオルタナティブ(代替)投資を中心に積み増す。
- 収益力を向上させるために下期もオルタナティブ投資の投資対象を広げる。
- オルタナティブ資産や不動産への投資の残高を積み増し、基礎的な収益力強化とリスク分散をはかる。
- グリーンボンド(環境債)や再生エネルギー事業への投融資など、気候変動問題の解決に向けた投資を積極化させている。
- 運用環境の先行き不透明が強いなか、市場環境を見極めつつ慎重に運用を進める。
◆ 今年度の相場見通し(図表2)
- 長期金利については、0.10%中心。
- 米長期金利については、若干引き下げ、足元の水準(1.5%台)より若干上目線の生保が大半。
- 国内株については一部を除き、横ばいもしくは若干の引き下げ。ただ、年度末の日経平均株価は3万円乗せの見方が大半。
- NYダウについては、大半が見通しを引き上げ。
- ドル円は引き上げ、110円を上回る見通しの生保が大半。
- ユーロ円は130円前後が大半で、足元の水準から大きく外れない見通し。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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