米国取材報告③-中国との覇権闘争に関する米国の現実

2018/12/05

日米の株価は下落しているが、世界ではポジティブな動きも

荘厳な劇場(写真1)などで行われたG20サミットは、大団円ではないものの、最悪の結末は回避されました。国際政治や世界経済は、(投資家の一部が悲観するほどには)悲劇的な状況ではありません。

6月のG7サミットでは、米国の孤立が浮き彫りになりました。通商や移民をめぐる対立で、トランプ米大統領が首脳宣言を拒否したのです。これに対し、今回は地味ながらも宣言がまとまり(多角的貿易体制の貢献など)、トランプ氏も言葉を慎みました。今の世界では、その程度でもポジティブなことです。

追加関税の棚上げについても、もう少し評価されてよい

G20サミット時、米中首脳会談が開催されました。ここでトランプ氏は、来年初に導入する予定だった中国製品への追加関税を、当面保留(90日間)としました。これも本来、前向きに評価すべきです。

1か月ほど前には、追加関税は予定どおり発動される、とみる人が少なくありませんでした。その予想が外れたことは、トランプ政権も案外、現実的な判断が行えることを示しています。実際、関税の応酬は国内産業(米国の農業など)や消費者に痛みを与えます。それは、政治的にも得策ではありません。

米国の重大な弱点は、同胞意識の弱さ

米国での買い物などにおいて、関税の影響はまだ感じられません。しかし幅広い品目への追加関税が発動されれば、インフレが痛感されるはずです。その場合、怒りはトランプ政権にも向かうでしょう。

保護される製造業の一部は、中国製品への関税を歓迎するかもしれません。しかし、米国で製造業に従事する人は全就業者の1割以下です。そうした他人のために痛みを甘受できる人は、極めてまれです。所得や人種などで分断された国なので、同胞意識が弱いのです(公共施設が劣悪なのもこれが根本原因)。

米国において、あからさまな反中感情は確認できない

中国との覇権争いの中では痛みもやむを得ない、と考える米国人も少数です。富裕層を除き生活は楽でなく、かつ、総じて内向き姿勢であるため(図表1)、他国との抽象的な争いには関心がないのです。

反中感情も特にありません(ただ、中国の慣行はフェアでないと言う人は多い)。それは次のような体験からもわかります。つまり筆者など日本人が米国へ行くと、大抵、中国人だと勘違いされますが、だからといって敵意を向けられることはありません。中国人は米国社会に馴染んでいるからです(写真2)。

歴史的には米中覇権闘争だが、これは各人の動機ではない

トランプ氏の主たる関心も、覇権争いではなく、米国からの輸出を増やすことです。そのため、巨大な中国市場と縁を切るわけにはいきません。よって、本格的な米中新冷戦が到来するとは思えません。

米国では、2年後の大統領選挙に向けた運動が始まりました。トランプ氏の言動は、その点からみていく必要があります。ただ、その際に米中覇権闘争という物語に固執すると、事態を見誤ります。歴史的な舞台はともかく、同氏を含め個々の登場人物を突き動かすのは、もっと世俗的な動機だからです。

図表入りのレポートはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

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