インフレについて:なぜ米国は利上げを開始したのか?
インフレの原因
米国経済の行方は、かなりの程度、インフレ動向にかかっていますが、その予想は容易ではありません。実際、米国のインフレ率(図表1)は、数か月前にはほとんど予想できなかった高さに上昇しています。
米国などにおける昨年以降のインフレは、コロナウイルスのまん延によるサプライチェーン(物品の供給網)の混乱が、大きな原因となっています。また、インフレは、ウクライナ危機のような紛争(→原油高など)や、人々・企業の心理からも、多大な影響を受けます。それらに関する予想は、極めて困難です。
インフレの影響
同時に、インフレが経済全体にどのような影響を与えるのか、についても、正確な予想を行うのは至難です。インフレで損失をこうむる人々・企業がある一方、利益を享受する人々・企業もあり得るからです。
例えば、賃金など所得の伸びがインフレ率を下回る(=実質所得がマイナス)人にとっては、インフレは害悪です。他方、自社の製品やサービスを値上げできた企業は、売上高を伸ばせるかもしれません。昨年、インフレが進む中で米国株が大きく上昇したのは、値上げによる業績向上などが期待されたためです。
インフレの循環
ただし、前年比10%を超えるようなインフレが生じた場合には、経済の安定を損なう、と考えられます。それほどの高インフレのもとでは、インフレのスパイラル(悪循環)が生活や業務を混乱させるからです。
高インフレを痛感すれば、就業者は、生活水準を維持するために、より高い賃金を企業に要求するでしょう。企業は、就業者をつなぎ止めるべく、その要求にある程度は応じねばなりません。それはコスト増となるので、利益確保の観点から企業は値上げを実施せざるを得ず、それが一層のインフレを促進します。
インフレの心理
そのようなスパイラルが本格的に作動すると、どの程度のインフレで落ち着くのか、誰にもわからなくなります。そうしたスパイラルは、人々や企業の心理という不確かなものに、大きく左右されるからです。
インフレの先行きを読めなくなれば、人々や企業は、支出や設備投資を抑制するはずです。将来の展望が不透明になると、支出や投資を抑えたくなるのが、一般的な心理だからです。そうなった場合、経済全体の需要が圧迫され、経済成長率が低下します。極端な高インフレが危惧されるのは、主にそのためです。
インフレの抑制
インフレのスパイラルを阻止すべく、米連邦準備理事会(FRB)は、16日に利上げを決めました。そうした金融引締めで世の中に出回る資金の量を抑えるのは、インフレを抑制するための標準的な措置です。
ただ、FRBも、ウクライナ危機などは解決できません。したがって、人々が見込む中期的なインフレ率(図表2)は、今後もっと高まる可能性があります。よって、原油などの高騰→人々のインフレ観測の高まり→インフレ加速、という連鎖が続く可能性に対し、FRBも投資家も、まだ警戒を緩められません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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