選挙の季節がやってきた:日本の前に、ドイツに注目
重要な選挙が続く
秋の訪れとともに、ロシア、カナダ、ドイツ、日本など世界各国で、重要な選挙が行われます。それらのうち、世界的に最も重要とみられるのは、9月26日にドイツで行われる総選挙(連邦議会選挙)です。
その選挙後、約16年間も首相を務めたメルケル氏が政界から引退し、ドイツの新首相が決まるのです。英国の欧州連合(EU)離脱、トランプ氏の登場などで英米が迷走する中、人権を尊重する自由民主主義の支柱はメルケル氏だった、と言っても過言ではありません。同氏の引退後、何が起こるのでしょうか。
メルケル氏の人気
堅実、温厚で、飾らない人柄のメルケル氏は、今もドイツで絶大な人気を集めています。コロナウイルスに関しては、同氏の理知的な対応が世界で称賛されました(ただドイツでも現在、デルタ型の感染拡大)。
引退の真の動機を知っているのは本人だけですが、引退表明がなかったら、同氏の属するキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は、きたる総選挙でも、第1党(最多議席の党)の座を守ったでしょう。そしてメルケル政権は、5期目(1期は4年)に入ったはずです(ドイツの首相は、在任期間の上限なし)。
ドイツの選挙制度
各党が推す次期首相候補は、メルケル氏に比べると、やや魅力が乏しいようです。そのためもあり、選挙戦の様相は流動的で、世論調査では、各党に対する支持率の順位が何度も入れ替わっています(図表1)。
なお、ドイツの総選挙では小選挙区制も併用されますが、総議席は、比例代表制に基づき各党の得票比率で配分されます(小選挙区制と比例代表制が別々に適用される日本の衆議院選挙と比べ、ドイツの制度は若干複雑)。このため選挙直前の政党支持率は、各党の議席数を予測する上で、かなりの程度有益です。
第1党はSPDか
通常、首相は第1党から選出されます。そして現在、政党支持率でトップを走るのは、ドイツ社会民主党(SPD)です。同党の首相候補、ショルツ氏は現財務相であり、豊富な政治経験が評価されています。
支持率の2番手はCDU/CSU、3番手はグリーン(緑の党)です。ラシェット氏、ベアボック氏というぞれぞれの党首が首相候補ですが、選挙戦で両氏は、有権者にあまり良い印象を与えられずにいます。選挙日までにCDU/CSUが盛り返す余地は残っていますが、SPDが第1党となる可能性が高そうです。
最注目はグリーン
いずれにせよ、議席が多党に配分される比例代表制などのため、どの党の議席も、過半数には全く届かないでしょう。そのため選挙後の数か月間、第1党を軸に、様々な連立パターンが模索されるはずです。
注目すべきは、グリーンです。同党の姿勢は、現連立政権をなすCDU/CSU、SPDとは、大きく異なるからです。急進的な環境保護、財政拡張、中国やロシアへの強硬策などです。よって、連立政権でグリーンが重要な地位を獲得することになれば、メルケル時代の終わりを、世界に強く印象づけるでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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